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母との約束、250通の手紙のakrutmのレビュー・感想・評価

母との約束、250通の手紙(2017年製作の映画)
4.5
一人息子に対して過剰な期待と愛情を注ぐ母親と、その愛情に応えようとする息子を描いた、エリック・バルビエ監督のドラマ映画。フランスの小説家ロマン・ガリーの同名自伝小説が原作なので、ロマン・ガリーの伝記映画となっている。この小説は1970年にジュールズ・ダッシン監督によって妻のメリナ・メルクーリを主役として映画化されている。

映画では、外交官として赴任しているメキシコで首都の病院へ行く車中で、最初の妻であるレスリー・ブランチが原作小説『夜明けの約束』の原稿を読むという設定で、ロマンと母親ニナの物語が回想的に描かれていく。一人息子への愛情はどの母親でも強いものだが、ニナがロマンに対して注ぐ愛情(小さい頃はまだしも、成人してからがすごい)や期待(小さい頃から自分の息子は将来フランスで外交官で小説家になるという)はとにかく強烈である。こういう母親って、どこにでもいそうな感じであるが、ロマンとニナの場合には母親の期待が現実になってしまうのだから、母親に感謝すべきなのかもしれない。そんな親子関係の物語も、後半で描かれる第二次大戦中になると、ちょっと変わっていくのも見どころである。その後のロマン・ガリーの活躍や二番目の妻になるジーン・セバーグとの出会い(二人とも自殺をしている)なども描いても面白いように思うが、この母親に勝るインパクトはないのかもしれない。

とにかく、ニナとロマンを演じたシャルロット・ゲンズブールとピエール・ニネが良い。特に、シャルロットが見せる狂気とも言える愛情を息子に注ぐときの表情や晩年の老けた演技が素晴らしい。『なまいきシャルロット』の頃のシャルロットを思い出すと、もうこんな役をやるような年齢になってしまったのかと、妙なため息が出てしまう。一方のピエール・ニネもさすがの演技で、安心して見ることができる。この二人が主演というだけでも、映画の質がわかるというものである。1970年の映画はかなりマイナーっぽいが、本作は十分に満足できる珠玉の映画である。特に、シャルロット・ゲンズブールやピエール・ニネのファンは見るべきであろう。

最後に、邦題は相変わらず粗悪で、ミスリーディングで、ネタバレである。『夜明けの約束』のままでいいんじゃないの?この映画に関わった人たちをもっとリスペクトしようよ。
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