たく

ロード・オブ・カオスのたくのレビュー・感想・評価

ロード・オブ・カオス(2018年製作の映画)
3.5
ノルウェーのブラックメタルを確立したと自負するユーロニモスと、彼のファンとして接触してくるヴァーグとのマウンティング合戦が軸になってて、残酷描写がとにかくしつこく正視できないレベル。「ヒメアノ〜ル」の5倍増しくらいの胸糞演出に、映画館で観てて一人の若い男性客が前半のあるシーンで突然発狂して出て行っちゃったのはビックリしたけど分かる気がした。

編集テンポは良いし終盤の崩れた化粧を互いになすりつけ合うラブシーンも美しく、ところどころ笑いもあってセンスをビンビン感じさせるんだけど、高評価付けるにはさすがに抵抗あったね。同じ北欧メタルでめちゃくちゃ良かった「ヘヴィ・トリップ」的なアゲアゲ感を期待してたので面食らった。
実話とフィクションが織り交ぜになってることが冒頭のテロップで示されて、どこまで事実なのか気になる。

バンドが名を売るためキリスト教を冒涜する過激な犯罪集団になっていく展開で、ユーロニモスにファンとして接触してくるヴァーグのいかにも温和で無害そうな外見に、ちょっと「聖なる鹿殺し」を連想した。

ユーロニモスは過激行為を仲間に示唆するだけで自分では何もできず、事態が勝手に進展するのを内心オロオロやり過ごすばかり。死に取り憑かれたカリスマ的ヴォーカルの自殺を目にしたショックから彼の幻影に囚われ続けたユーロニモスが実は普通の心優しい青年で、やっと解放されたところにアイツがやって来るのが怖い展開。
ここでBGMに祈りを捧げるっぽい崇高な音楽が流れるところに、残虐行為をオーディンに象徴される北欧神話の儀式みたく描く意図を感じさせるのが印象的だった。
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