カタパルトスープレックス

Possum(原題)のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

Possum(原題)(2018年製作の映画)
4.2
イギリス版デヴィッド・リンチな趣の作品です。本作はマシュー・ホルネスの初監督作品です。マシュー・ホルネスは脚本も手掛けてます。今後期待の監督ですね!

りょーこさんに回していただきました。ありがとうございます😀

舞台はイギリスのとある街。フィリップ(ショーン・ハリス)が列車で故郷に帰ります。フィリップは人形師でカバンの中に人間の顔をした蜘蛛の人形(これが表題のポッサム?)を詰め込んでいます。行き先は子供時代に過ごした家。その家には叔父のモーリス(アルム・アームストロング)が住んでいます。フィリップはポッサムを廃棄しようとするのですが、なかなかできません。この家には何があるのか?ポッサムとはなんなのか?という話です。

この話はフロイトの不安のセオリー(theories on the uncanny)に基づいているそうです。心理学的にUncannyとは幽霊や異世界など非現実的な不安ではありません。現実的に当たり前にあることや出来事に不安を感じることだそうです。

マシュー・ホルネス監督は原作となる"The New Uncanny: Tales of Unease"を出版する際に、ふたつの「不安」を観客にアピールするテーマとして選びました。一つが「ドッペルゲンガー」で、もう一つが「人形師」だったそうです。

上記を踏まえたボクなりの本作における解釈はネタバレになってしまうのでコメント欄で書きます。

ショーン・ハリスの演技が素晴らしいです。あれ、カラーコンタクトでもつけてるのかなあ?目が怖いんですよ。何を見ているのかがわからない。恐怖や不安の表情ってこれだけバリエーションがあるんだ!というくらいの不安の玉手箱です😱

デヴィッド・リンチ監督もマシュー・ホルネス監督も描いているのは「悪夢」です。そういう意味では似ています。両方とも人間の中から発せられる不安や不気味です。かっちりとしたストーリーがなく、終わりもオープンエンディングで観る側に解釈を委ねるのも同じです。しかし、デヴィッド・リンチ監督の場合は異世界感が強く、マシュー・ホルネス監督は現実感が強いという表面上のアプローチの違いがあると思います。どちらかと言えば『ウィッチ』や『The Lighthouse』のロバート・エガース監督の方に近いですかね。

デビュー作でこのクオリティーなので、これからすごく期待できますね!