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ボーダー 二つの世界のトレバーのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
5.0
生きづらい。自分が明らかに他の人達と違うという疎外感。悩み。
でも、解放される場所はあって、自分はここでなら
本当の自分でいられるかもしれない。

これ、結構誰しも特に思春期の頃は体験した事が
あるかもしれません。
で、大人になってもそれを引き摺る人もいるでしょう。
ボクなんかも結構それです。
人生経験を経て、折り合いをつけるやり方を身につけていった感はあります。
それによって自分の中で「共感性」が生まれ、
「違うもの」に寄り添えるようになり、
映画や創作物をより楽しめるようになった気がします。

本作は、北欧ならではの世界観で出来ています。
森や自然の中に妖精がいる世界。
そこと、人間界との境界線。

生きづらい、疎外感を感じている人達だけでなく
人種、貧富、美醜、病、国、様々な「違い」により
境界線が引かれてしまっていいのか?
色んな人達がいて、それぞれ違っているのが当たり前なんじゃないのか?
いつから、右へ倣えをしなければいけなくなったのか?
いつから皆んなが同じ方向を向き同じ考えを持ち、
違う人達は排除されなければいけなくなったのか?
今、全世界で起こっている流れにNOを突き付ける作品だと思います。

本作の世界観についていけないという方が
いらっしゃるようなんですが、
むしろ日本人こそ親和性が高いと思うんです。
河童、天狗、狸、狐。
森や山、川に日本各地でずっと語り継がれている物の怪、妖怪。
身近に、土着的に本来はあったものです。
いつしか都市部での暮らしにより薄れていったそれらですが、
「ゲゲゲの鬼太郎」が今も愛されているのは
どこかそういった境界線への帰属本能から
来ているのかもしれません。

一体いま何を見せられているんだろう、
とずっと緊張感と不安が続く世界観の本作ですが
それを踏まえるとそれほど違和感なく観られると思います。

見た事の無いもの、世界に触れる事が出来るのが
映画の醍醐味だと思っているボクとしては、
最高の映画体験でした。
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