訪問介護ヘルパーに従事している夫人(速水今日子)が、アルコール依存症の夫と距離を置き、離婚を前提とした別居生活を始める。破綻状態に陥った夫婦の人間模様を描いている、新東宝配給のピンク映画。別題「スリップ」「み・だ・ら」。
国映(新東宝配給)が製作する、最後のフィルム作品。夫婦間の心のすれ違いを、暖かい目で見守るような作風になっており、"喜劇的な演出が登場しないのに、なぜか喜劇の感覚が得られる"という、(良い意味で)珍妙な雰囲気に支配されている。
ヒロインの夫は、四十路でアル中で失業中という、ダメにダメを重ねたダメ人間。夫役の男優・伊藤猛のダメ芝居が堂に入っており、ダンボールで公園の斜面を滑ろうとするシーンに、ダメオヤジの哀感と退廃が迸っている。
中盤に入ると、職に就いた夫が肉体労働者となるのだが、妻との隙間風は旧態依然としたまま。妻と友人(ほたる)の二人が、厳格と慈愛の両方を兼ね備えた、母性溢れる態度を貫くところが、大きな醍醐味。ピンク映画黎明期の女優・内田高子の特別出演も必見。