TOT

よこがおのTOTのレビュー・感想・評価

よこがお(2019年製作の映画)
3.6
‪誰にでも優しいからこその傷つきやすさが欲望と攻撃を引き寄せて、悲劇は復讐劇に変わる。
過去と現在、愛と妄執、黒髪に白髪が斑らに混ざる人生の残響。轟音の残響。
女が女を見つめる間に男がいて、筒井真理子と市川実日子の闘争を池松壮亮がセクシーに揺らすのよ!!
『淵に立つ』にもあった光源の変化が作る異相がいい。
急なオレンジの光、逆光で見えない表情。
人生の不条理と不吉は何げない瞬間に、振り返ればあの時、ちょっとした変化で訪れていたのだ。
怖いような笑うような夢想/夢幻描写も良かったな(ちょっと説明的すぎて興醒めするカットもあったけど)。
‪事件を単純化し、わかりやすい犯行動機や過去のトラウマとの関連を求めるマスメディアの取材描写は現実と地続きのよう。
判然としない真相にレッテルを貼り、犯罪を犯すような人間と自分たちは違うと、加害者親族も加害者と見る人々によって主人公が地獄の責め苦にあう恐ろしさも描かれて、連日の京アニのニュースも重なって胃に重いものが溜まる。
‪誰かからの愛を期待して流され、誰かと一緒に生きようと、心を開いて弱さを見せて傷つき、傷ついた分だけ憎しむ。
孤独な生活の中で縋った先で捻れる想い。
筒井真理子の横顔と共に、市川実日子の正面顔が忘れがたい。
‪一人の女に二つの顔、二人の女の一つの顔。‬
ものすごく濃密な女と女の映画。‬
『淵に立つ』よりは話に驚きが無いというか台詞が弱い気はするけど、演者と撮影の妙で最後まで観ることができる。
筒井真理子と市川実日子が違う顔の一つ存在にも思えてくる。
ところで、真理子様はいつから幻を見てたんだろうね。
TOT

TOT