りっく

ロマンスドールのりっくのレビュー・感想・評価

ロマンスドール(2019年製作の映画)
4.0
美大卒のフリーターがあれよあれよと職につき、美人の彼女ができ、職人として世に大ヒット商品を送り出す。ラブドールというニッチな業界を知れるという意味でまず面白さが担保されており、工場で働く面々との悲喜こもごもの人間模様がコミカルかつ軽快に描かれていく。

だが、本作は妻に職業を偽り、浮気を隠しているように、コメディの皮を被ってはいるものの、中盤からもうひとつのジャンルが顔を覗かせる。そこからタナダユキは性と愛、生と死、さらには夫婦であることの意義を繊細に描いてみせる。

けれども、本作は必要以上にシリアスだったり湿っぽくなるのを回避する。あくまでも下世話な俗っぽさから軸足を離さない舵取りがいい。俗から聖に手を伸ばしつつも、また俗に回帰する。

もはや呼び名も変わり存在自体も忘れ去られたダッチワイフが無残な姿で波打ち際に打ち上げられ、それを拾ってポツリと呟くしょうもない一言。ギョッとするような物語であるものの、まとめて笑い飛ばして前へ進もうとする後味のよさがいい。
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