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イン・ザ・ハイツのnaoのネタバレレビュー・内容・結末

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

大迫力だった。予告編と本編との間に、差を全く感じなかった映画。過大宣伝はされておらず、むしろ広告の方が弱い。それ位圧倒される映画。

移民の街•ワシントンハイツを舞台に4人の若者が夢を追う姿を描く。人種問題を扱っているが、日本人には馴染みにくい、理解しにくいテーマかもしれない。映画はとにかく歌とダンスが詰め込まれ、休憩する余地はない。難しいことを考えなくても楽しめる映画。しかし背景を知れば、より映画を深く楽しめるというのも事実。

アップテンポなラップと、キャッチーなメロディに乗せられて、いつの間にか143分経ってしまう。

全編を通して特に好きな曲は”Breathe”。大学を辞めたニーナが、周囲の期待に応えられないことへの苦悩を歌い上げる。ラテンやサルサといった民族色の強い楽曲が多い中で、この曲はより身近な、王道のブロードウェイスタイルを用いたバラードだからだ。歌詞にもぜひ注目してほしい。楽曲には、スペイン語と英語の両方が用いられている。この曲も例外ではなく、冒頭から始まるスペイン語の歌詞と穏やかな歌い出しに、今はわからずとも懐かしさを感じてしまう。久しぶりに帰郷したニーナの思いに、容易に感情移入できた。

歌がこれほどまでに強く、大きな位置を占める映画は、過去にも未来にもこの映画だけだろう。ソウル、R&B、ラテン、サルサ、サンバ、メレンゲ…これでもかというほど、様々な音楽の要素が詰められ、誰にとっても懐かしい、普遍的なのに民族に依拠した誇りも込められている。プエルトリコ人、ドミニカ人のルーツの深さが窺えた。

ミュージカルが苦手でも、一度は絶対に観てほしい映画。なぜなら鬼才リン=マニュエル•ミランダによる楽曲に秘められた強さは、きっとその苦手意識を軽々と超えていくからだ。
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