DJあおやま

ある船頭の話のDJあおやまのレビュー・感想・評価

ある船頭の話(2019年製作の映画)
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オダギリジョーが監督として挑んだ本作は、クリストファー・ドイルが撮影を、ワダエミが衣装を担当するなど、芸術作品に振り切った意欲作。エンタメ要素は皆無で、海外の映画祭にはウケるかもしれないが、なかなか人を選ぶ作品だ。
明治を思わせる時代、新たに橋が建設されることでその役割を脅かされる船頭の物語。近年でいえば、AIの発達によりあらゆる仕事がAIに奪われるなんて言われているが、今も昔もそうやって時代の流れとともに文明の波が押し寄せ、不要なものは役割を終える。橋ができるより蛍が良いだなんて台詞が、この映画のテーマなのだろうか。どれだけ便利になっても、時代に取り残されようとも、必要なものはきっとあるはずだと、無くなってはならないものがあるのだというメッセージを感じた。ただ、この作品はそのメッセージに留まらず、時代に取り残されるもののある種の狂気を描いていたのが印象的だった。
上映時間は137分と長尺、けして起承転結のはっきりしたストーリーでなく、舞台も岸から岸を行ったり来たりで変化がないため、長さを感じずにはいられない。美しい景色や魅力的な演技、監督のこだわりが画面いっぱいに感じるものの、正直退屈に感じてしまう瞬間はちらほらとあった。
なにより柄本明の魅力が詰まっていた。永瀬正敏、蒼井優、浅野忠信、村上淳、草笛光子、橋爪功、豪華キャストが続々と登場するのは監督の成せる技か。なかでも、細野晴臣なんて配役、びっくりしてしまった。
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