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沈没家族 劇場版のkaoのレビュー・感想・評価

沈没家族 劇場版(2018年製作の映画)
4.5
いやー、観てよかった!
共同保育、名前は固苦しいけど、
このスタイル全然ありでしょ!
私の子育ても監督の生まれた年とほぼ同じ地下鉄サリン事件の年からスタートしたんだけど、仕事を続けていくために子を預けるのは自然な流れ。21歳で母になった穂子さんは密室育児でなく自分の意思で『誰か関わってくれませんかぁ?』と ちゃんと発信したことが素晴らしい。そこに集ってきた人達との信頼関係が築けたことも穂子さんの人柄あってこその幸いだったと思うし。
私はそんな豊かな発想はなにもなく、2度の子育てを通じて保育園に12年も通い2回目の育休を申請した時まだ預けることに周囲は全然理解なんてなくて、今でいうマタハラ→上司から『保育園に預けてまだ働くなんてこれ以上お子さんを犠牲にしてよいのですか?』とジリジリと詰め寄られ
結果、解雇されないために男女役割一時期交替→夫は仕事を辞め主夫に、私は会社に専念、という啖呵を切って何とかしたわけで。
卒園後に痛感したのは、親以外の何の繋がりもない他人様に子供への愛を注いでもらえるってのは本当にとても尊いことだと思う。
子供の名前を沢山の親以外の様々な人たちに呼んでもらえたこと、それがとても幸せなことだと今しみじみそう思う。
土くんは記憶にないかもしれないけど、たくさん名前を呼んでもらっただろうし、様々な価値観の中で育ったことは絶対いいことだと思う。
しかし東中野からなぜ手狭になったからといって島に~?そしてヤギ…の展開には笑った。スゴいね。
私の好きな作家さんで久田恵さんという方もシングルマザーで息子を育てていくのに住み込みでサーカスに入ったというエッセイを書かれており、バイタリティある女は違うなぁ…と。
お父さんもまたスゴいキャラな方で穂子さんを以てしても一筋縄ではいかないロケンロールな父親の山くん、彼の撮った土くんと穂子さんの数々の写真には切ないけど確かに愛も映し出されていているようにも見え…
ホントにユニークなお二人から生まれた土くん。
終始、穂子さんの人生を生き抜く力に圧倒されたけれど、それでも穂子さんご本人は そんなの"たまたま"みたいなことをめっちゃゆる~く、かっぱえびせんをパリパリ食べながら人生の教訓みたいなことをさらっと言うシーンが好きでした。

今日は上映後に監督さんの舞台挨拶が思いがけずあって得した!
きけば今日で公開してから52回目の舞台挨拶だという。何と真摯な。さっきまでスクリーンの中でちっさい土くんを目で追っていたその人が動いて目の前で話しておられる、何だか不思議な感覚。
子育て真っ最中の人、保育の現場にいる人、私みたいに子育て終わった人、色々な人に観て欲しい。
自分のルーツをこんなふうに20数年も前の映像からまとめ発信できる形にしたことは本当に意義あると思う。
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