MasaichiYaguchi

燃えよ剣のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
4.0
「関ヶ原」の原田眞人監督と岡田准一さんが再タッグを組み、司馬遼太郎氏による幕末小説を映画化した本作は、乱暴者や無鉄砲を意味する「バラガキ」だった主人公の土方歳三、盟友の近藤勇、沖田総司が、幕末の京都で治安維持活動、特に尊攘派志士の弾圧活動をした浪士隊である「新選組」となって八面六臂の活躍をしていく様をスケール大きく描いていく。
物語は、史実通りに土方、近藤、沖田らの「浪士組」入隊、その後、芹沢鴨を中心とする「壬生浪士組」を結成、京都守護職の松平容保から、主に不逞浪士の取り締まりと市中警備を任されるまでになっていくところから本格的に幕を開ける。
土方歳三を岡田准一さん、近藤勇を鈴木亮平さん、沖田総司を山田涼介さん、土方の思い人・お雪を柴咲コウさん、前半のキーマンである芹沢鴨を伊藤英明さんが演じるという豪華キャストで幕末歴史劇が展開する。
「壬生浪士組」は、近藤勇、土方歳三を中心とする試衛館派と、芹沢鴨を中心とする水戸派で構成されていたが、芹沢鴨の生糸問屋大和屋庄兵衛への狼藉によって粛清され、試衛館派が組を掌握し近藤を頂点とする組織「新選組」が確立する。
元治元年(1864年)6月5日、池田屋事件で攘夷派志士を斬殺・捕縛し、8月の禁門の変の鎮圧で新選組は大きく飛躍する。
映画では「池田屋事件」が前半のハイライトとして、ダイナミックに再現されていく。
アクションマスターと呼ぶべき岡田准一さんが、本作でも重厚な殺陣を披露し、同様に池田屋という狭い屋内で近藤勇役の鈴木亮平さん、沖田総司役の山田亮介さんも火花散る剣戟を展開する。
池田屋事件で新選組の知名度が上がり、隊士も200名まで増強され、収容先も壬生屯所から西本願寺へ本拠を移転する。
だが勢いのあったのは此処までで、新選組は旧幕府軍に従い戊辰戦争に参加して、初戦の鳥羽・伏見の戦いで新政府軍に敗北、その後の甲州勝沼の戦いに負け、凋落の道を歩んでいく。
終盤での山場は、新政府軍と旧幕府軍との最後の戦闘である箱館戦争になるが、北海道を舞台に銃火器をメインとした近代戦がスケール大きく展開されていく。
土方にしろ近藤にしろ、侍に憧れた農民出身の者たちである。
だから真の侍たらんとして新選組の隊規として有名な「局中法度」を作り、破ったら切腹という厳格なものにしている。
だが、徳川幕府滅亡と共に新選組の終焉を描く本作は、「ろうそくが燃え尽きる時一瞬だけ燃え盛る」の例えのように、土方歳三の生きざまを通して侍時代の最後を熱く燃え盛る時代劇として描いていると思う。