あしからず

窮鼠はチーズの夢を見るのあしからずのネタバレレビュー・内容・結末

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

原作過激派のためあしからず…

色々言いたい事はあるけど映画としては比較的綺麗に纏まってるんじゃなかろうか。飲み物で優位性を示す所や今ヶ瀬愛用の椅子に座ったたまきへの反応とか良かったし、ホモソーシャルなノリの乳首当てゲームとかかわいかった。
しかし原作が海底2万マイルとしたら映画は足が付くプール程度。勿論完全にマンガ通りの実写化はムリだし多少の変更は出るだろうけど許容範囲を超えてた。なんでラストああなっちゃったのか。原作の、薄氷の上を歩むがごとく危うい2人の希望と無情がない交ぜになったあの慈愛に満ちたエンドはどこ行っちゃったのか…。あのラストの今ヶ瀬のセリフがめちゃくちゃ良いのに…。ノンケとゲイという壁を何度も乗り越えてやっとたどり着いたあの結論が地獄の中で光ってたのに。リアリティを出したかったのか、オープンエンドと言えばそうなんだけど浅い。明らかに関係性の描写も足りてないしこの漫画の密度を130分では描けてない。
そして成田凌きらいじゃないけど今ヶ瀬は正直ちがう。なんであんな高円寺にいそうな文系大学生みたいになっちゃったのか。なんだあのエスニックな部屋。原作今ヶ瀬は大伴以上にイケメンで線の細い美形のイメージだったから、まだ大倉さんの方が今ヶ瀬のイメージに近い。今ヶ瀬はあんなださい英字Tシャツ着るタイプちゃうしメンヘラ感も全然足りない(いや映画だけみたら充分あったのかな) 大伴も初めからブラック大伴すぎて流され侍というより確信犯のクズになってた(カーテンdisとかどうした)
後輩がゲイで自分を好きという事への戸惑い描写が薄すぎたのも違和感。しかもこの映画では一切ゲイという言葉が出ない(気付いてないだけだったらすみません)。あえて使ってないんだと思うけど逆に不自然。大伴や夏生も一切それを口にしない。
言葉でのお互いの感情描写が少ない割に映像描写も薄すぎて、結局2人の気持ちの交差が見えず。圧倒的に言葉のコミュニケーションが足りない。肉体コミュニケーションもとりあえずセックスシーン入れとこうという感じで気持ちの近付きまでは見えてこない(受け攻め交代はあるけど)。でも主演2人の絡みはがんばってたな…ジャニーズあそこまでやってくれるのか…。
最初の今ヶ瀬のキスのしつこさはなるほど。舐めるようなキスはチーズをかじる鼠イメージなのかな。
また唐突に「オルフェ」を挟むが(著作権切れてるから使い勝手もいいんだろうな)、監督は自己犠牲のイメージが合うからと言ってたけどそれも謎。あんなの自己犠牲なんて綺麗なものじゃなくただの身勝手な愛で、だから良いのに。エゴ全開の人間らしい今ヶ瀬が愛しいのに。
海の回想挟む場所も唐突すぎて違和感。わざわざ回想として挿入しなくても車のシークエンスの流れのままでよかった。

つくづく監督との解釈違いがすごい。たぶん原作好きすぎて意見が偏っています。大伴は絶対あんなオシャレな部屋に住まない…
あしからず

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