細かい。とにかく細かい。そこがいいんだ。
俺は車に対する造形は深くない。それでもわかる本作のクラシックカーとその作り込みの細部へのこだわり。1960年代を舞台としているにも関わらず、まるで現代を描いているかのようなリアルな臨場感。それは演技、道具、全てに至る製作陣の極上のこだわりがなければ為せる技ではない。それがいかなるこ拘りであるかが具体的にわからずとも、その熱がビシビシと伝わってくる。すごいぜ全く。
それもそのはずなのだ。主演がクリスチャンベールとマッドデイモン。アクターの星のもと、アクターになるべくここまで導かれてきた二つぼしが合わさった時、その輝きは止まることを知らないのだ。
特に良かったのはフォード社の依頼をクリスチャンベール演じるケンにマッドデイモン演じるシェルビーが伝えにいき、結果もみくちゃの喧嘩になるシーン。
この喧嘩の臨場感あるカットがそれは賞賛もので素晴らしい。
まず、ケンの奥さんが買い物帰りのケンが車から降りるのを家から眺めているシーンから始まる。
そこにシェルビーがケンの元にやってくる。
ケンに協力を告げるシェルビー。しかし、なんやかんやありぶつかる2人。取っ組み合いの喧嘩に。散らばるケンの買い物袋。
その散らばった残骸。の中から缶を掴み殴ろうとするも、躊躇し咄嗟に柔らかいパン(だったような気がする)に持ち帰るケン。
心配するもばかやってる2人を面白半分で見ている近所の野次馬。
家から出てきて、2人の関係性を知るからこそ止めることなく見守るケンの妻。
ここのシーンの一つ一つの動作が細かいながらもそれぞれの関係性や性格が巧妙に描き出されており無駄が一才ない。妻視点から始まるのもいい。
正直、ここだけではなく、約2時間半もある本編の中に無駄がほとんどない。かといって全てが集中力を要するというわけでもなく、気づくか気づかないか見たいな部分も、大事な部分もうまく配分されている。
ストーリーとしての完成度がとにかく半端じゃない。これは素晴らしいです。面白かった。