対比と調律。
古典王道のシェイクスピア劇を、ナショナルシアターライブでは現代風な劇で演じている。
今回も其れに則るものであったが、今作はその古典な台詞回しに名言の数々と、現代に置き換えた素晴らしい舞台と衣装が際立っていた。
そしてその対比の溝を埋めて余りある名演者達の演技に、目紛しい場数を自然に流して見せた展開の舞台照明とセットと音に圧倒された。
それのどれもこれもが互いに傷付けずに"活きた"素晴らしい3時間強だったと思う。
ナショナルシアターライブを観てきた中で一番。この形での完成形を観た気がした。
まるで別人の様に変わるレイフ・ファインズ(ハリーポッターの名前をヴォルデしちゃいけないモートさん。007のM様ですよ)の舞台での演技力よ。
自堕落、尊厳、心酔、崩壊、自棄。エジプトの開放感とローマの威厳を。アントニーという存在を、その生き様を体現し切ったと言って過言ではない演技に脱帽。演技って凄え。
普段はレビュー書きつつ思い返している内に、良かった反動の粗を探しちゃうんですけど、珍しく逆に良かった所をドンドン思い出すという。
素晴らしく際立った一つ一つの部品が、対比される様に並べて置かれているのに、一演目として調律されている素晴らしい演目。拍手。