寄り道わき道

ナショナル・シアター・ライヴ 2019 リア王の寄り道わき道のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

役者さんの息も、観客の息も聞こえるような小さな舞台。その劇場を望んだのは今回の主役イアン・マッケラン。役者さんの希望がここまで通されて舞台が作られていく…さすが演劇の国だと思ったし、それほどにイギリスという国に演劇という文化が根付いているんだなと思った。最後アンコールでイアンが観客それぞれの顔を見ていくところ…感動すぎた。

有名なシェイクスピアの四大悲劇が現代風にアレンジされていて(大きくではない)、しかしなお重厚感のある内容。心が震え、鳥肌が立つ、そんな舞台だった。誰も救われない悲劇でもその中に役者さんのチャーミングさもあり観客的には心が救われる部分も。舞台で起こる何もかもが本当で、本物の感情がそこにあって…あの場所にリア王は存在していた。あれほどの威厳も、あれほどの老いの様や狂気の様のリアルさも、あれほどのリア王を演じられる役者さんも本当に少ないだろう。80歳という年齢で4時間弱ほぼ全てのシーンに出ずっぱり、その上驚異的な長台詞を見せつけ、リア王というキャラクターの年輪を我々の目に、DNAに焼き付けてくれたイアン・マッケラン。彼の演技の圧倒的力強さ、迸る熱量によって見ているこちら側も物理的に引き込まれていくような、自分たちもその時代のその場所に存在していたような感覚になる。退屈なんて一切ないあっという間の4時間弱?だった。他のキャストの方々も熱演で素晴らしかった。コーデリアだけは少し硬い感じでイメージと違ったけど、それもそれでよかった。