あくとる

DUNE/デューン 砂の惑星のあくとるのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
2.5
"深淵"で壮大な物語の《序章》

幾度も映像化が試みられたものの、決定的な映像作品が生まれてこなかった難題SF大作。
70年代にホドロフスキーが熱心に取り組んだが制作中止。
1984年のデヴィッド・リンチ版はお世辞にも成功とは言えず。
自分は未鑑賞なのだが、2000年にはテレビシリーズが制作され、今回のドゥニ・ヴィルヌーブ版が通算5度目の映像化になるとのこと。
2021年の技術を駆使して創られた『DUNE』は果たして決定的映像化作品となったのだろうか。

まず、いきなりこの壮大な世界観に突入すると、間違いなく頭が大混乱すると思ったので、事前に人名や用語の基礎知識をある程度確認。
普段はそこまで予習はしないので、それだけ期待していたといってよいだろう。
最大限のパフォーマンスを発揮できるであろうIMAXレーザーにて鑑賞。
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の過去作は好きだし、彼の手腕なら傑作になる可能性は十分にある。
しかし、その期待値からの落差は激しかった。

1本の映画としてこれはダメだろう。
見終わって思ったのは「本作の見所は何だったのか?」ということ。
あまりにも全てを続編に投げっぱなし。
2時間30分以上を費やして、起承転結の起承くらいで終わる。
オープニングタイトルに添えられた"Part 1"はズルい言い訳に思えてならないし、ハッキリ言って本作への評価を先延ばしにするための逃げだろう。

先に言っておくと映像は間違いなく良い。
シンメトリックな格調高い画(ロジャー・ディーキンスには及ばないが)。
細部まで作り込まれた最新のCG。
SF作品の映像化として説得力はある。
フレッシュさには欠けるものの、ルックスは素晴らしい。

しかし、物語が本当に半端で退屈。
特に前半は説明に次ぐ説明と後の展開を示唆する"意味深"な映像がくどい。
そのせいで大した人物描写も無いままに主要と思われる人物が死んでいく。
あんなに執拗に幻視していたチャニとの出会いもビックリするほどあっさり。
ラストも、ほんの数分前に登場したばかりの人物との決闘にどう盛り上がり、感動しろと言うのか。
ドラマが一切無いので、心の動かされようが無い。
雰囲気だけは重厚でシリアス。
悲しいほどにユーモアやセンスオブワンダーが皆無。
アクションも魅せる気が無いとすら思えるほど平坦で爽快感がない。

もしかしたら、続編で化ける可能性はある。
その前提でドゥニ・ヴィルヌーブは作ったのだろう。
だが、本作単体で成り立たせる気の無い姿勢には怒りを覚える。
ホドロフスキーは本作を観て元気になるだろう。

(追記)
https://virtualgorillaplus.com/movie/dune-third-film/
記事によると3作目までの構想があり、ドラマも展開するらしい。
しかし、2作目のゴーサインすらまだ出ていないとのこと。
これで制作中止になったら悲惨過ぎるが…。