〈2024/5/1加筆修正〉
映画的多幸感に満ちた、現代の映像神話。
意外にもわかりやすいストーリーラインを辿る、映像体験という名の運動に酔いしれる良作でした。
まず最初に言っておきますが、本作の頂けない点は物語としては序章でしかないことと、尺が長すぎることくらいです。
本作の主軸は説得力しかない映像でしょうから、物語の部分はそれほど比重を高くして評価する必要はないと思います。
よって、まとめると贅沢な尺使いのみが、唯一の特筆すべき悪い点でした。
さて、ここからは基本的に褒めるパートが続きますが、ご了承下さい!
初見時こそ固有名詞の連発で混乱を招きますが、2回ほど観れば流石の私でも本筋を楽しめるようになるくらいまでには理解できました。
これだけSF世界が緻密に設定、設計されているのは、昨今のファンタジー作品では珍しいように感じました。世界で最も売れたSF小説という肩書きが、伊達ではないと思い知らされましたね!
映像的、視覚的快楽を刺激するカットが全編に渡って散りばめられ、未知への好奇心が最後まで途切れることはありませんでした。
特に、重厚で厳かな空気感やルックが保たれる中、ハルコンネン家側のウラディミール(ステラン・スカルスガルド)が空中に浮かび出すシークエンスには、それまで神秘的なカットが続いていただけに、声を出して笑ってしまいました。こればっかりは1人で家鑑賞していて、本当に正解だったと思うばかりでした!笑
造形物の歪さやミステリアスさ、本作特有のサンドワームという生命体の存在、スターウォーズシリーズでいうフォースのような、ボイスという力等々、作品の構成要素のどれもが適度に配置され、それぞれを面白く受け取れるよう演出がなされていたと思います。
サンドワームとは画面越しに対面している筈なのに、ポール(ティモシー・シャラメ)たちと同じ位置に立っているような臨場感を覚えられたのは、何よりもこの映画を観て良かった!と思わせてもらえた瞬間でした。このクオリティを優に超えてくる訳ですから、いかに『デューン 砂の惑星 PART2』が異常であったかがわかりますね。
総じて、長さはしっかりと感じるものの、映像体験としての満足度の高さから、何でも許せてしまうような良作でした!