垂直落下式サミング

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
ドラクエに関しては無知で、最近になってからSwitchのやつをやったくらい。あと、友達の家でプレステ2のをやらせてもらったこともあった気がする。RPG世代じゃないけど同人誌の知識で断片的に知ってる(クリムゾンコミックス)
ビギナーだけど、公開時に往年のファンが受け止めたであろうコレジャナイ感は共有できたつもり。有名作品ドラクエ5の大雑把な知識くらいは持ってるから、勇者の情けない性格とか、ビアンカの無難な幼馴染みヒロインキャラっぽい感じとか、解釈違いであんま嫌だった。CGキャラクターのマンガすぎる演技も面白くない。
RPGは、実際に遊んだ時間に応じてプレイヤーが報われていく主観のコンテンツなので、やっぱり客観の時間表現である映画とは相容れない。
ちゃぶ台ひっくり返しな入れ子構造も、うまい具合に逃げたなとは思うけど、本気のドラクエをみせて欲しかったファンからすれば激怒案件だし、進次郎構文くらいあっけらかんと中身がないので、劇映画としても失敗していると思う。
なんだけど、これを踏まえてのラストシーンがすごくよかった。敵を倒してゲームがエンディングをむかえる。よくある場面。一緒に過ごした仲間が遠くにいってしまうような、物語のおわり。
勇者が世界に平和を取り戻したことで、ストーリーが締めくくりに向かいはじめると、同時に主人公含めたキャラクターたちも其々みんな役目を終えていく。この寂しさ。物語が「おわり」であることを強く意識させるこの場面は、映画全体のトーンから浮いていて、とても印象に残るものだった。
RPGのエンディングは、自分が「仲間」だと思っていた奴らが、単なる「登場人物」だってことを実感させられてしまう瞬間だ。僕はセーブしてカセット抜いたらいつでも現実に帰れるけど、彼等は筋書きから抜け出せないし、何ならクリアデータは世界ごと白紙に戻るしかないっていう行き詰まりの切なさ…。
世界を守るために頑張ってるのは、物語を終わらせるためだっていうのは、RPGゲームを遊んでいるときに常に隣り合わせに存在する矛盾である。ずっと遊んでいたいのに、物語は終わりへ向かう。この事実が虚しいんすよね。努力した結果の報いが終幕っていう理不尽。僕が頑張ってなし得た世界を、終わりにしたくない。これってワガママでしょうか?
アイツらと会えなくなるくらいなら、もう世界なんて救わずにそこらをウロウロし続けてレベルカンストさせていたいとまで思ってしまう。だから絶対的な終わりに向かうドラクエよりも、終わってもまだまだ仲間と旅できるどころか、通信対戦や図鑑埋めなどやり込むのが前提のポケモンのほうが好きなんだよな。
昔のゲームは、あくまでも仮想世界からの出口を用意してたんだってことがわかった。そんな思いが再現されたいいエンディングだったと思う。映画本編のストーリーがもうちょっとよかったら、評価も変わったかもわかんない。