ディアッカ

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーのディアッカのネタバレレビュー・内容・結末

1.0

このレビューはネタバレを含みます

果たして、これは誰に向けて作った映画だったんだろうか。

わざわざネタバレを踏むと言うことは、この映画を見たか、はたまた見る気が無くて感想だけを踏みにきた人だと思うので、単刀直入にネタバレをすると、この映画で起きるのは「ドラゴンクエスト5をモチーフにしたVRゲームを遊んでいる40歳くらいの一般人おじさんが、実はウイルスに侵食されたVRドラクエをゲームを通じて直す」という、この映画を観てない人からすれば「は?」という話。

ちなみにこの設定、映画のラスト10分くらいで唐突に突きつけられて、作中伏線らしい描写は一切ない。
たしかに、幼少期がSFCのドット絵風のダイジェストで進んでいく過程や、花嫁が真に決まるまでの演出を「伏線」といえば聞こえが良いのかもしれないが、それを肯定的に捉えてもクライマックスに突きつけるテーマとしてはあまりにもお粗末な展開だし、しかも本人が元からそういう使命を背負ってVR世界にダイブしたならまだしも、マジでただの一般人おじさんで、VRドラクエの世界を直す力を手に入れるのがたまたまって、そんな気持ち悪い話ある?
起承転結のない話って、マジで歪で気持ちが悪いんだよね。
比較に出して申し訳ないけど、昨年末の仮面ライダー映画も、本作と同じように「仮面ライダーは実は架空の存在だった」というメタフィクションを採用しているが、あちらは最初から本筋にそれを捉えていたし、たとえ架空の存在であっても、ヒーローとはどうあるべきなのかという結論をヒーロー自身が導き、最高のクライマックスへ導いた。
今作はどうだろうか?物語のクライマックスもクライマックス。ゲマを親子の力で粉砕し、やっと勝利したかと思った矢先、ゲマが自らの命を投げ捨て開いたミルドラース召喚の門を、主人公の息子、アルスが渾身の力で封じたその刹那、時が突然止まってカオナシ(VR世界に侵入したウイルスらしいよ。お腹痛いね)が出てきたかと思ったら、「この世界はゲームだ、お前はいい年してゲームなんかに夢中になって恥ずかしくないのか?早く大人になれ」と説教してきて、主人公が棚からぼたもちで手に入れたワクチンロトのつるぎを「この世界は偽物なんかじゃないんだー!」って絶叫しながらカオナシを粉砕して終わり。
は??????脚本家の方、マジで頭がおかしくなっちゃったのかな??る??
失礼しました。

俺たちが大好きなドラゴンクエストを、お前の説教のためのパーツにするなよ。
大人になれてないのは、どっちなんだ?
人の思い出を踏みにじってまでやる説教は気持ちいいか?

ふざけるのも大概にしろ。


映画としては当然最悪も最悪ではあるものの、脚本を書かれている方のメンタルが冗談抜きでドラクエユーザーをコケにしているとしか思えない演出の数々を繰り広げてくるので、ドラクエファン、ひいてはドラゴンクエスト5のファンはこれを観にいくのは相当の覚悟がいる。
個人的に最悪だと思ったのが、花嫁決定のプロセス。

当初はビアンカに背中を押され、フローラを花嫁にすると決めるわけですが、前夜にもてなしを受けた帰り、自身の泊まる宿屋(そもそも婿入り決まってんだから何でルドマンの館じゃ無くて宿に帰ってんだよって矛盾は一旦置いといて)で、共に旅をしたビアンカからの祝賀会の誘いを断り、主人公はそそくさと自室に引っ込むわけですが、そこで占いオババに出会い、自分の本当の気持ちと向き合う聖水を渡され、それを飲んだ主人公は自分が本当に好きなのはビアンカと知り、翌日フローラとの結婚を破断にします。
原作以上に懐が広かったルドマンの心意気で、何とか天空のつるぎは主人公に託され、主人公はビアンカに告白して無事結婚。やったね!
あ、占いオババの正体はフローラで、主人公の本心を確かめるために聖水を飲ませたんだよ。可哀想だね。

…………は?

俺は何度繰り返し遊んでもビアンカを選ぶ生粋のビアンカ派ですが、流石にこの展開はない。ありえない。
一般人おじさんも、元はビアンカ派らしく、今回はフローラと結婚したいから設定でフローラと結婚するようにプログラミングを組んだと後からネタバラシされるわけですが、だったら何でフローラと結婚してねぇんだよ!!!!
永遠に結論を、安易に公式が出しちゃいけないデリケートなゾーンに、あろうことか「女に押されて決めた結婚を、その女の策略に見事にハマって破断になり、もう片方の女の手を取る」という、主人公の手が全く汚れない形でフローラを蹴落としたのが本当の本当の本当に気持ちが悪い演出で最悪。俺フローラ派だったらキレてこの時点で帰ってたかもしれないくらい最悪の演出。しかもこの後フローラは本編に一切出てこない。ゲマとの最終決戦で、ヘンリーや服従させたブオーン、チラッとサンチョですら出てくるのに、フローラはこれっきり。まさに当て馬としての存在。

つくづく、なぜドラゴンクエストの中でも5を題材に選んでしまったのか?
ファンの人気が高いのには理由があって、そこを大事にしないといけなかったはずなのに、この作品はその大事な部分を、ロードローラーで踏み抜いて、山崎貴証の毒の花の種をバンバン撒いていく。
ドラゴンクエストのセオリーの解説もないから、ドラゴンクエストを知らない人が見たら何が起きてるか全く理解できないだろうし、ドラゴンクエストのファン、ひいてはこの作品でメッセージを伝えたかったドラゴンクエスト5のファンは、この作品見たら本当にスクエニに、山崎貴に対して深い失望と嫌悪感を抱くんじゃないか?

改めて聞くけど、山崎貴さんにとっての「ユアストーリー」って何ですか?
俺はこの映画を見て、「ドラゴンクエスト山崎貴」って感想しか出なかったよ?

抜群に画面映えするCGだけが、この映画の拠り所。それだけは間違いなく、それ以外が全部カス。
すぎやまこういち御大のBGMに対するリスペクトも足りてねぇというか、音の使い方のセンスがない。特徴的なのはOPのテーマソング3回も流すは流石に無能。名曲でも使い所考えず何でもかんでもかけりゃいいっていいってものじゃないと、俺は思うよ。

総合的に見て、久々にデカいやらかしをかましてくれた映画だなという総評。
多分年間ワースト1ありえる。それぐらいの映画。
ディアッカ

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