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シノニムズのTOTのレビュー・感想・評価

シノニムズ(2019年製作の映画)
3.9
パリジャンになりたいイスラエル人青年が夢見た、自由 (Liberté)、平等 (Égalité)、友愛 (Fraternité)、政教分離(laïcité)。
主人公が必死に覚えては地面を見つめて繰り返す今は使われない言葉、死んだ言葉。ブルジョワカップル、過激派シオニスト、変態的芸術家。
裸になっても同化できなかった。
扉は開かなかった。
叫んでも届かなかったラ・マルセイエーズがこだまする。
踊るハンディカムとスウィッシュパン、不思議なタイムラインが笑いと不条理を綯い交ぜにし、予想は外れ、男同士の近すぎる関係にホモエロティックな欲望を滲ませては更に混沌とする。
‪確かな軸がない展開が、同義語は同義語でしかなかった悲しみと苦しみを強調する。‬
憧れのパリに来た主人公ヨアヴが助けてくれたカップルの男性エミールとヘッドフォンでクラッシックを聴いて恍惚としてる時、彼女のキャロリーヌが現れるとエミールがヘッドフォンジャックを抜いて、部屋に音楽が溢れ出して、キャロリーヌが電気をパチパチ明滅させるシーン良かったな。
あんなん見たらパリやべぇ!パリのカップルやべぇ!って暗示かかるでしょ。
そのシーン含め、‪カップルが気前よくスマホや服をくれるのも、向こう岸に行くって台詞も、同化プログラムの不気味さも、諸処の体験の非現実さは冒頭にバスタブで死んだヨアヴが見る夢世界がゆえの不条理かもしれない。
そういうのウゼェ〜って感じもなくはないけど、私はこれはありでした。‬
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