蒼井ことり

在りし日の歌の蒼井ことりのネタバレレビュー・内容・結末

在りし日の歌(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

3時間10分くらい。疲れた…。
久しぶりの映画、久しぶりの3時間越えの映画。
向学心と好奇心でいっぱいだった10〜30代の頃は、こういう海外の市井の人びとの社会派大河ロマンが好きで、涙したり心打たれたものだった(『覇王別姫〜さらば我が愛』みたいな。寝る頃まで感動で興奮冷めやらなかったなぁ。)若かったんだなと思うし、経済的にも社会的にも守られていて、人の暮らしぶりに学んだり感銘する余裕があったんだなと思う。

いま、私の暮らしも結構苦しい。コロナで失業や自粛も続き、心身ともに疲れ果てた。毎日はシビアだし、挫けそうになる。人のことは省みている余裕がない。

だから映画を見ている間はせめて笑えたり、美しいもの、心地よいものを味わいたいと思ってしまった。そんな年齢になってしまった。
暖色系に包まれた家族の食卓を切り取ったチラシのフォトイメージから、なんかもっとこう、センチメンタルで叙情的・懐古的な、温かい小品を期待してたんだと思う。

だから、中盤くらいまで見てもうクタクタになってしまった。ひとりっ子政策で、一人息子を失うとかもうすげーシビアでしんどくて。お揃いの人民服で労働して、大した娯楽も夢も持てない生活…まるで自分の生活みたいで。
にしても自分がふつーに過ごしてきた80年代が歴史上のストーリーとして扱われるようになってはや数年が過ぎたかな。
30代までは、映画で扱われる時代は私の知らない時代だったし、憧れたり、恐ろしく感じたり、とにかく未知だったのに。
私、年取ったなぁ(泣笑)

後半からガラッと変わって、現代パートが急に面白くなる。
主人公夫婦の友人夫婦の息子が医師になってすごい金持ちになってるあたり。漫画みたいだけど。
シンシンが亡くなったことに愛する友人夫婦の妻の死ぬまでの後悔や、その息子の告白(僕がシンシンに沼地に降りろ、そうでないともう遊ばないといった…云々)が泣けた。
シンシンの死は、その親だけでなく周りも30年苦しめたんだ。ひとりの人の死の重さを感じる演出。
血の繋がらないシンシンもちゃんと出てきてくれて、漫画みたいなタイミングで都合良いなと思いつつも、爽やかなラストでよかった。意欲的で、一個人の暮らし(ミニマムなテーマ)を歴史(ダイナミックな素材)と絡めてくるのもうまくて、いい話だった。

しかし、長い。もうこの尺の映画は40代の今は忙しくて観ている暇がない。こういう長編は、今後は老後のお楽しみになるのかなぁ…。
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