takanoひねもすのたり

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

3.5
若き英国人記者ガレス・ジョーンズ。
ヒトラーに取材し、世界恐慌の中で何故ソビエト連邦が繁栄しているのか、その資金源に疑問を持ちスターリンと会見したく現地へ渡る。
しかし秘密主義の体制に阻まれて思うように取材が進まない。
スターリンが掲げる国家成長計画(集団農業化-穀物徴発)の裏に何かあると推測した彼は監視の目を逃れてウクライナへ向かう。
そこは外向けに報道された豊かな農業地帯ではなく、道端に死体が横たわり、食べるものがなく死体を齧る村人達の姿だった。

ガレス・ジョーンズは実在人物で旧ソ連へは3度渡っています。
3回目に旅した後でウクライナの飢饉の状況をプレスリリース。
しかしその為、旧ソ連から入国禁止になり、満洲国モンゴルで調査中にソビエトの秘密警察により射殺され30歳で死亡。

抑えられた色彩と寒々しいロシアの冬、広い大地に地平線までの雪、黒とグレーと灰色の世界。村人達の服装にも色はなくただ一様に疲れ切った表情。

首都では外国人記者達が、アヘンと豪勢な食事とお酒、コンパニオンとの享楽に耽る。

そしてスターリンは最後まで登場しない 笑

ウクライナと南ロシアへ潜入した彼の行動と、ホロモドールの再現がメイン。
大飢饉の悲惨さは映像からイメージは伝わりますが、
・ジョージ・オーウェル『動物農場』
・トロッコ問題(捕虜の6名か餓死する人々か)
・スターリンとホモドロール(人為的大飢饉)
・旧ソ連時代、外国人記者への厳重な監視。
が、頭の中をぐるぐるしながら観てました。

ガレスが子供達に、この食料は誰が?
と問うた時「お兄ちゃん」とだけ答えた意味。
少し聖歌のような節回しの
飢餓が世界をつつむ
飢えで正気を失い 子供を食べた(ウロ覚え)
の農家の子供達のはやり唄。

この飢饉でなくなったのは確定されてはいないもののおおよそ400万から1450万人以上とされているそう。
実際はもっと悲惨で凄惨だったんだろうなとぼんやり考えます。
政治の裏で存在を居ないものにされた名もなき人達の沢山の墓標は今はどうなっているんでしょうか。