津軽系こけし

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

4.0
堕落への憧れ、その本質


酒、売春、殺人。
フリッツホンカといえばドイツでは割とポピュラーな殺人鬼として位置付けられている人物で、当時のドイツの子供たちは親から「良い子にしていないとホンカに襲われるぞ」と教え込まれていたという、ある意味ハンブルクの住民には親しい存在。
本作はそんなフリッツホンカの殺人録を彼の視点から描いたサイコスリラー映画。

70年代のハンブルク風俗街の汚れた雰囲気や貧民層の実情が写実性濃く描かれているため、風俗街の歴史を覗くつもりでもそれなりに楽しめる。そんなハンブルクの風俗街も今ではB級観光地として親しまれているのだから不思議なものである。

そしてその汚れを象徴しているかのように佇むホンカという人物、冒頭2分ほどで映されるホンカの表情。その瞳の奥に燻る狂気に既に圧倒され、その時点で私は鷲掴みにされてしまった。というか俳優さんすげぇ
禁酒を続けていれば清掃員の女性とも親しくなれたかもしれない、あの若い子に優しく接していれば仲良くなれたのかもしれない。実際のフリッツホンカがどうかは知らないが少なくともこのホンカの瞳に一瞬映る優しさは私は本物であると思う。

優しさと狂気に揺れる、酒と女に堕落する。俳優さんの怪演と優秀な裏方に恵まれた快作、酒のつまみに是非どうぞ
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