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イエスタデイのmanamiのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
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12秒間も世界中が停電してたら、各地でもっと大惨事が起きてるはずでは?と、最初こそちょっと冷めた目で見ちゃってたけど、すぐに引き込まれた!
まず私にとってツカミになったのは、本人役のエドシーラン。声だけかと思いきや、その後がっつり出てくるし、それどころかものすごくイイ奴として重要な役割を担うことになるし、なんだったら着信音とか“相棒”気取りの曲名改変とかでイジられてるし。エドシーランおもろいな。
次に心を奪われたのはエリー。なんて良い子なの。良い子過ぎて健気過ぎて、自分の知り合いでリアルにこんな子いたら、申し訳ないけどコワイくらいなのよ。
そして良い子レベルでは彼女の好敵手なのがギャビン。曲の素晴らしさに誰よりも早く気付いた彼、名プロデューサーを目指せるのでは?レコーディングは三人とも心底楽しそうで、こちらも心踊るね。
もちろんロッキーも!ただのお調子者くんかと思いきや、ちゃんと付き人らしく成長していくし、屋上へのドア前での会話はしみじみしちゃう。
そんな「イギリスの若者達」に対して、「アメリカの大人達」がめちゃくちゃイヤな奴ばっかりなの何故?ピラティス強欲マネージャーのデブラとか、戦略会議のウザ陽キャMCとか。脚本のリチャードカーティス、何か個人的恨みでも?
登場人物、まだまだ言いたい!彼がリバプールを訪れることを知ってたり、「この世界での彼」の居所を突き止めたりできるご婦人は、さては名探偵か。
そう、忘れちゃならないのが「この世界の彼」。幸せだった、それ以上の勝ちはないー見ず知らずの若者にそう伝え、彼の目をまっすぐ見ながら幸せになる秘訣を伝授する。その姿は紛れもなく「幸せな78歳」そのもので、「彼」がこうやって暮らせているならこの世界も悪くないなと、温かな気持ちにさせてくれる。
さあそして、主人公のジャック。初レコーディングは楽しそうだったのに、光が当たれば当たるほど、影も濃くなっていく。
彼の心情にビートルズがずっと寄り添っていて、このために書かれたのかと錯覚するほどの曲もある。それだけ普遍的な素晴らしさがあるということか。ビートルズ世代じゃないし洋楽に詳しくない私でも、ほとんど全ての楽曲を知ってたくらいだしね。恐るべしビートルズ。
「助けて!」と叫んでも、ジャックが音楽を愛する気持ちはずっと揺るがなくて、だからこそのラストの決断。家族や仲間たちと過ごす彼を見ていると、50年後にはあの彼と同じように穏やかな顔つきになり幸せでいるだろうと思えてくる。
この世界では他にもいろいろなものがなくなっているようだけど、もし自分だったら?何か完コピできるものあるかな?自分の好きなものが消えてしまったらとても悲しいけど、じゃあそれをまた生み出せるかとなると、きっととても難しい。
だから彼女たちはジャックに「ありがとう」と伝えたかったんだろうな。私たちの世界を明るく楽しく優しくするのに、今も少なからず貢献してくれているのだろう、ありがとうビートルズ。

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