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イエスタデイのペジオのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.9
ビートルズはポップなモーツァルトだった

結局一番有能だったのは主人公を「発見」してスタジオを貸した奴なんだよな
人間的にも出来た人だったし

「才能に惚れる」とはたまに聞くが、そうでない「個人の人間性を愛する」というのは誠実さや素朴さが仄かに漂い好感を持ってしまいがち(そりゃそんなリリー・ジェームズは可愛いわ…。幼馴染み属性との合わせ技でやられる。)
だが、圧倒的な才能はどんな人間性でも肯定してしまうというのもあるし、それこそ『アマデウス』のモーツァルト宜しく天才は変人であって欲しいという僕の個人的な思いもある(ギャップがというよりかは単純にその方がカッコイイ。)
主人公の優柔不断さは一見良いヤツっぽくも映るので、SNSの普及で当時以上にワン・マン・オンリーの「人間性」(つまりは「面白さ」である。映画で「良いヤツ」認定されるという事は「面白くない」という事だろう。)が問われる様な現代において、主人公がバズる過程の描写はギリギリのリアリティだったと思う

「ポップ」とは平たく言えば「大衆的」という意味か
本作は「神と人間」が滲むテーマの種類的にも「ポップな『アマデウス』」って感じである(ナイスガイで在り続けたエド・「サリエリ」・シーランの心中を察すると泣ける。)
題材がポップミュージックだとか映画のルックが軽いとかっていうよりは、テーマに対する視点をより人間側に下ろしている感じがする(その部分を『アマデウス』の時代と対比して観れば現代批評的な側面もあるし、寄り添うという意味で優しい目線も獲得している。)
物語の着想自体はビートルズありきだと思うが、あくまでビートルズはモチーフにしておいて、より普遍的な物語を語ったところも『アマデウス』に似ている(小ネタ大ネタ含めてこれくらいのバランスが丁度良いかも。)
「俺だけがこの天才を理解している」という両作品に共通する主人公の特性
ラストでの彼とビートルズの関係の着地点は、やりたい放題やっただけの主人公の行動に「意義」をもたらす
それはそのままこの物語の「意義」と同期する(まあ、ちょっと甘すぎる気はしないでもないが。)

ビートルズが世界に及ぼした影響とかを掘り下げないSF的な不満はある
エージェントのキャラを「才能に濡れる女」としてヒロインと対比させても良かったのかもしれない(そしたらこの映画の良い意味の軽さが無くなるか。)
物語主導の映画だったので、映像のダニー・ボイル味キツイ部分は「ノイズ」だったかな
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