ナーガ

風をつかまえた少年のナーガのレビュー・感想・評価

風をつかまえた少年(2019年製作の映画)
4.1
とても良かった。
アフリカのマラウイという国で起きた実話を元にした映画です。

みんなが行くからとか楽しいからという理由だけで学校に行っている全ての子供と、その親に、観せたい映画です。そしてかつての私にも。

この映画の主人公の少年は両親から制服をプレゼントされて、「ありがとう」と言って抱きついて喜んでいましたよね。
私と夫は3人の子供を育てましたけど、高校の制服を買ってあげたときも、大学の学費を払ってあげたときも、「ありがとう」なんて誰からも言われてません。照れ臭さもあるけど当たり前だと思っていたんですよね、子供たちは。そして親の私たちも。
でもそれは恩知らずとか悪いことではなく、「ありがとう」を言わずに学校に行ける社会に住んでいるという、幸せなことなんですよね。

でもそれが当たり前ではない世界があるんです。それを、この映画は気づかせてくれるし、勉強する事の意義にも気づかせてくれます。
  
映画の最後の方での親子の会話で、こんなのがありました。
父「俺は昔から失敗ばかりだ」
ウィリアム「何もかもが失敗じゃないよ。僕は学校に行けた。」
これですよね。子供を学校に行かせることが国の未来を作るってことですよ。
そして、子供が自分を乗り越えて、自分にできなかったことを子供がすることを素直に喜ばなければダメってことですよね。

 
ところで、以前観た『スケーターガール』ではインド、こちらはマラウイですがどちらも学校に行くのに制服が必要なのですね。
どうしてだろう。
共通点としてどちらもかつてイギリスの支配を受けていたということがあるので、イギリス的な教育では制服が必要ということなのかな。
そういえば昔住んでたオーストラリアでも、小学校や中学校は制服でした。


下の方にあらすじを載せておきます。
お終いまで書いたので、知りたくない方はスクロールしないでください。






















《あらすじ》
貧しいけれど賢い両親に育てられた少年ウィリアム・カムクワンバは、機械いじりが大好きで、ラジオなどは簡単に直してしまう。
ウィリアムはなんとか学費を出してもらって学校に行けるようになるが、電灯がなく、家で勉強することができない。それで、先生が乗っている自転車のライトを盗もうとして、電池ではない不思議な仕組みで光が灯ることに気付く。自転車の車輪を回すと電気が作られることがわかり、ウィリアムはその仕組みを知りたくて仕方がない。

その年は雨季が遅く洪水が予想された。収穫が見込めないため、村人の多くは、土地の木を切って売り始めた。ウィリアムの父は木を切ると洪水が防げなくなるとの信念から、頑として木を売らない。ウィリアムは、学費を払えなくなり、学校を退学になってしまう。(マラウイには義務教育制度はないようです)
それでも勉強がしたいウィリアムは、学校に行って理科の授業を受け続ける。
放課後、先生に、自転車のライトがつく仕組みについて聞くと、「ダイナモ」という名前だけは分かったが詳しくは先生もわからない。図書館で調べればいいと言われるが、退学になっているので図書館にも入れない。ウィリアムは、姉と先生が付き合っているという秘密をネタに先生を脅して、図書館だけ出入りを許される。
図書館で、ウィリアムは「using energy」という本を見つけ、その表紙の風力発電の風車に魅了される。

やがて収穫時期を迎えるが、その年、この村は大変な旱魃でとうもろこしがほとんど獲れず、農家はお金も食べ物も底をついてしまう。
ウィリアムは、旱魃から村を救うために、風力発電で電気を生み出し、ポンプで地下水を汲み上げれば良いと思いつく。ウィリアムは図書館でさらに勉強し、ガラクタ置き場で部品を集めながら設計図を描く。
ダイナモは、先生と駆け落ちする姉に頼んで、先生からの置き土産として貰い受ける。
もう一つどうしても手に入らない部品があった。自転車の車輪だ。お父さんの自転車を貰おうと、計画を話し説明するが、そんなことができるわけないと、断られる。ウィリアムは「僕は父さんの知らないことを知ってる。学校に行ったから。」と言ってしまう。
ウィリアムの姉が学校を優秀に卒業したのに先生と駆け落ちして居なくなってしまったこともあり、またウィリアムにバカにされたようにも感じてしまったお父さんは、「学校や図書館のことは忘れろ。これからお前は農業の勉強をするんだ。」と怒鳴りつける。
旱魃はますます激しくなり、村人はどんどん出ていってしまい、族長は死の床についている。
お父さんは妻から「あなたと結婚してから多くのものを失った。いつになったら失わなくなるの。」と静かに聞かれて、何も答えられない。そして、自転車に乗ってウィリアムのもとに行き、じっくりと話し、自転車をあげる決心をする。

そして、お父さんや残った村人たちも協力してウィリアムの風力発電&ポンプシステムが完成し、乾いた土地に水が行き届きましたとさ、めでたしめでたし。
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