ジャック

風をつかまえた少年のジャックのネタバレレビュー・内容・結末

風をつかまえた少年(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

タイトルや予告編から、映画の展開すべてが、予測できてしまう。それでも、見に行きたいと思わせる力があり、見終わった後の清々しい気分は一級品だと思う。

アフリカの中でも最貧国とされる国マラウイに生まれた父親は、自然の脅威に抵抗するための国家政策も何もない国に苛立ちを覚えながらも、息子の言葉を聞こうともしない。一方、この父親は村の防災上必要と考えられている林を切って金に変えるという事業者の説明会で、土地を売ろうとする兄弟たちを怒り気骨のある面を持つ。

干ばつに喘ぐこの村に国家元首が来て、族長の元首への要望演説に怒ったガードマンたちが、年老いた族長を袋叩きにする。独立後も続く、独裁国家のような姿を見ると、民主主義がこれら途上国の中では、まだ遠い道のりが必要なのかと溜息がでる。政府による食料調達も出てくるが、多くの住民に行き渡るわけではなく、早いもの順なのだろうか、住民の生死がかかっている状況での対応とは思えない。

安月給だという学校の先生、ここでは、少年を助けるステキな指導者が描かれるのかと思っていたら、それこそ、サラリーマン教師の典型的な属人ぶりである。…にも関わらず少年が学問への熱意を諦めなかったのは何だったのだろうか。

ラジオから流れる9.11のテロは遠い国の出来事。この村では、英語と現地語が使われているが、学校の先生が、少年の姉に求婚し、故郷を出ることを要求するとき、土地の言葉の話が出てくる。「英語で話せば良い、土地の言葉は、本で勉強すれば‥」といったインテリの倒錯した心情も語られる。

この土地の困難を打ち破ろうと学校や親とも闘おうとしている少年の意思の強さに驚く。
ただ、どうも判らないのは井戸がありながら、ポンプではなく、なぜ人力で汲み上げなかったのだろうか。風力発電と水とのつながりの説得力が弱いように感じるのは私だけだろうか。

父親の祖父が彼に土地を譲らなかった過程ももう少し説明が欲しい。

ドラマの不十分さは、感じるのだが、俳優の演技やカメラの視線は確実で長回しになりがちなのが、テンポよくとても見やすく撮られていた。
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