てつこてつ

アンダー・ユア・ベッドのてつこてつのレビュー・感想・評価

アンダー・ユア・ベッド(2019年製作の映画)
3.4
先にSABU監督の韓国リメイク版を鑑賞したので、こちらの日本オリジナル版にもトライ。かつてWOWOWと契約していた際に録画していたものなので、劇場公開時はR-18指定の物がWOWOW補正(これが嫌で解約)のR-15版での鑑賞。

まずは、韓国リメイク版とは登場人物の設定などはほぼほぼ同じではあるものの、日本版のほうがストーリーテリングが圧締的に丁寧、また、高良健吾演じる主人公の心情がナレーションでちゃんと視聴者に伝わる作りなので、少なからずも共感しやすい。

11年前の大学生時代の回想シーンが韓国版よりも多めに挿入され、主人公と彼が一方的に思いを寄せるヒロインの繋がりがしっかり描かれているので、歪ではありながらも主人公にとっては純愛そのもの・・作品全体のテーマもサスペンスではなくラブストーリーのジャンルにギリ入るんじゃないかと個人的には思える程。

但し、この回想シーンこそが複雑な仕掛けとなっており、終盤、見ていて??となったので、韓国版ではバッサリ重要なシーンを切った意図も分からなくもない。

にしても、女性監督・脚本の作品とは驚いた。ストーキング行為、家庭内DVの描写において、容赦が一切無い。但し、韓国版のようにエロと暴力描写ばかり悪目立ちするところは無く(韓国版の夫が妻を張り手で殴るシーン、あれ、絶対一切の手加減無くリアルに殴ってると思われる)、視聴者が不愉快にならない程度にきちんとカメラアングルでごまかしたり効果音でイメージ付けを狙っているのは正解。但し、自分はR-15版を鑑賞したので、R-18だとこのDV描写ももっとキツいのかもしれない。

ヒロイン役を演じた西川可奈子の全身ヌードのシーン・・実は重要なファクターなのに、ここに来てのWOWOW補正で、今時リアルポルノでも見られないような雲のようなどでかいモザイクで大いに冷める。

何と言っても、よくもまあこんな役を引き受けたなと感心する高良健吾が抜群に良い。あれだけ端正な顔立ちなのに、特殊メイクや衣装に頼ることなく、歪んだ一方通行の愛情を抱く青年像をリアルに演じきっている。思い詰めた際の目の芝居のヤバさと言ったら・・。

個人的に本作がサスペンスではなくラブストーリーのジャンルに入ると思う所以も彼の演技に依るところが大きく、視聴者によって「ただただキモいストーキング行為」もしくは「純愛」と受け止め方が分かれる、彼のキャスティングとその演技は、解釈の面白さと作品自体に見事な深みを持たせていると感じる。

主人公に11年間思いを寄せられ続ける役どころの西川可奈子もフルヌードもいとわぬ体当たりの演技も凄いが、11年前の学生時代のキラキラ輝いていた回想シーンと、DV亭主の支配下の下、一気に所帯染みてしまった現在のシーンの演じ分けが上手い。

韓国リメイク版には無かった、「PERFECT DAYS」の役所広司ばりに、絶妙な表情だけでの演技を披露する高良健吾のラストシーンもいい。

本作では、主人公のトラウマがしっかり描かれてはいるが、そのトラウマだけでここまで突っ走るか?という根本的に納得できない部分が個人的には感じるものの(おそらく原作に忠実な作りかと思われる)、映画作品としては、高良健吾の見事な演技も含めて十分に楽しめる内容ではあった。
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