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かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~のmのレビュー・感想・評価

1.7
原作は未読だけど、アニメ版は観てます。

例えば福田雄一監督作品のような『映画としてはクソだけど作ってる側は楽しそう』という感じも英勉監督作品のような『なんかよう分からんが独自のルールで面白くしようと盛りまくってる』感じもそのどちらも無く、ただひたすら『仕事です』って感じで惰性でそこそこな感じで作られている。少なくともアニメ版には『映像作品としてクオリティの高い、面白いものにしよう』という気概や創意工夫があったが、この映画にはそういったものは無い。だから怒涛のハイテンションと濃さで塗り固めつつエピソードの順番に注意して突っ走るアニメ版に対して、この実写映画版はひたすら弛緩している。一応それっぽくしようとしているがそれでも弛緩している。そもそも実写向きではないというのもあるが、演出・脚本・撮影がまあ酷い。
観客をバカにしているのか作り手が馬鹿なのかあるいはその両方なのか、といった事を序盤の解説シーンで考えた。いくら中高生向けといったって今時の若い子はこんなクオリティじゃ騙せないのでは、と思ったがそうでもないのか。

言ってしまえばこれはアイドル映画なのだけど、この映画がアイドル映画として致命的なのは主演の平野君が全く輝いていない事。
申し訳ないけど正直明らかに平野君の演技力には難があるのだけど、それ以上に問題なのはこの役が彼の素質に全く合っておらず、完全なるミスキャストである事だと思う。劇中たまにはっちゃけた芝居をする時だけ平野君は少し活き活きしていたので、きっとそっちが彼の性に合うのだろう。だから冷静沈着な秀才の役などではなく、もっと彼自身の持ち味を活かした明るく弾けられる役柄・作品を与えてあげれば良いのにとつくづく残念に思う。
これではせっかく安くない金を払って推しを映画館に観に来た平野君ファンも可哀想だし(自分が前にテレビでキンプリを見た時はもっとキラキラして見えたし、ファンのみんなだってもっと魅力的な平野君をスクリーンで見たいはずでしょう?)、『売れてる漫画に人気者のアイドルを当てがって実写化』という最も安直な日本映画界のクソな流れに巻き込まれた原作ファンも報われない。何より平野君本人が気の毒だ。

それに対して奮闘しているのが橋本環奈で、正直彼女も別にそこまで巧い訳ではないのだけど、これは役の性質と彼女自身が合っている事が功を奏した。彼女自身も演技で色々工夫しているし。
彼女には単なる美少女というのを超えたスクリーンを支配できるパワーがあって、それがこの映画をギリギリ成立させている。やはりアップになった時の目力が力強く、そしてあのハスキーな声も良い。
て言うかみんなやっぱり橋本環奈のドSな『お可愛い事・・』が観たかったよね?その点だけは満足できます。
完璧に整い過ぎたルックスのせいでこういうフィクショナルな役ばかり振られてるけど、そろそろ彼女に日常的な役を振ってあげてほしい。今泉力哉監督作品とかに出ると面白いのでは(合わなさそうだけど)。


アニメ版を参照しつつ実写の自分の肉体に寄せて落とし込む芝居をしている橋本環奈に対して、恐ろしい事にアニメ版の声優の演技の完コピに挑んだのが藤原書記役の浅川梨奈で(「亜人」の時の綾野剛のアプローチですね)、下手すると大事故になる所を流石あの「咲 saki」経験者だけあって一切照れも無く堂々と完遂。実はヤンキー演技ができる事もちょっと活きてる。
巨乳イジリはやっぱりあったけど、そこが原作やアニメ程酷くないのは良かった(巨乳>貧乳の優劣比較をしなかったのが良かった、日本のアニメとか漫画のああいう描写見ると、うわ・・ってなるよね)。

英勉組でコメディ演技開眼した佐野勇斗も健闘。君はもっと英勉映画に出て壊れた方が良いぞ。


佐藤二朗の暴走は、コントロールできないならやらせちゃいけない。本人も劇中にアドリブで「誰か俺を止めろ!」って言ってるし。そういうのも『監督』の仕事だと思うけどね。どんぐりさんの酷い芝居を放置してるのもな・・・

もう少し真面目に批判を書くと、前半の2人の恋の鞘当てパートを多少削ってでもヒロインと藤原との関係をもう少し描いておくべきだったと思う。ていうか、あの後半の選挙戦の展開・・何?前半の映画館のシーンも酷い。
なんかね、投げ出したくなる気持ちも分かるは分かるんだけど、脚本家や監督がもう少し真面目に人間ドラマを構築しようとしていれば面白い映画にはなったと思う。

DAOKOの歌が流れ始める見せ場で彼を走らせない演出に失望した。
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