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マリオのTOTのレビュー・感想・評価

マリオ(2018年製作の映画)
3.7
スイスのジュニアチームで出会ったマリオとレオンはやがて恋に落ちるが、サッカー界のホモフォビアに直面する。
恋の喜びが夢を失う恐怖に変わる悲しさ、自分を偽る苦しみ、時代は進んでも根強い差別意識への問題提起が真っ直ぐに響く。
マリオの恋はセクシュアリティの自認も伴って尚更困難なものになり、戸惑って打ち消そうとしながら受け入れたレオンへの感情を、ホモフォビアによってまた誤魔化そうとし、さらにはレオンすら傷つけてしまう。
誰かを好きになることを責められて、夢と恋とどちらかを選ばなきゃいけないなんて馬鹿げてるよね。
2人の馴れ初めや、同性愛を隠さねばと思わせるムードに『モーリス』も想起したけど(レオン役アーロン・アルタラスがルパート・グレイヴスに似てる)、あちらは20世紀で、今や21世紀と思うと本当にしんどい……。
代理人やクラブとの話し合いの描写もしっかりと入って、サッカー界の内側を覗かせるようだったし、報道や世間が求める選手イメージを描いてたのも印象的。
出色の演出や脚本というわけではないけど、選手に関わる様々な人とのシーンの積み重ねが丁寧だった。
スイス映画賞ではマックス・フーバッヒャーの主演賞含む2受賞。彼が母親に見せる一瞬の表情素晴らしい。

劇中に登場するヤングボーイズはスイスに実在するジュニアチームだそう。
スタジアムやミーティングルームなど、実際の場所で撮影されたらしいけど、マリオとレオンが寮で使っていたロゴ入りマグカップとかの食器も実際のものかな。あれ、かわいかった。
https://qoly.jp/2018/02/16/young-boys-are-part-of-the-first-gay-football-movie-iks-1
『マリオ』とサッカー界のホモフォビアを取り上げた記事も参考になった。
ホモフォビアにあってサッカーを引退し、映画の製作段階でアドバイスしたウルバンの言葉が辛い。
「もっと上に行きたいと思ったら、スーツを着た人たちに囲まれて『お前は、お前でいてはいけない』と否定されるのです」
http://www.thinktheearth.net/think/2018/10/034homophobia/

上映したヨコハマ・フットボール映画祭に感謝。
もっと広く観られたらいい作品だと思う。
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