『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』のシリーズの原作者トールキンの少年時代から青年時代までを描いた伝記映画。
あまり期待をせずに見たけれど想像してたよりずっと良かったです。凄く面白かった!
トールキンがあの名作の数々を生み出せたルーツが分かって良かったです。
【ネタバレあります】
ロバート・トールキンと弟は父亡き後未亡人の母に一人で育てられている。母親は明るく素敵な人だ。
魔法やドラゴンや小人が出てくるおとぎ話を演じながら聞かせてくれるような人だった。兄弟はお話が大好きだった。勿論優しい母も。
そんな母が病気で亡くなった。トールキン12才のことだ。母は自分の命が短い事を知って亡くなる前にモーガン神父に子供たちの事を頼んでいた。
後見人の神父が彼らを引き取って世話してくれる人を探してくれた。富裕な一人暮らしの女性の家で暮らすこととなったトールキン(ニコラス・ホルト)は先にその家に引き取られていた同じく孤児のエディスと出会う。エディス(リリー・コリンズ)はトールキンより年上で引き取ってくれた女性の好きな曲を毎日ピアノで弾くのが彼女の役目だった。早く大人になってこの家から出たいと願っている。
やがてトールキンは名門高校に入学。彼は言語学に興味があり誰とも話さず勉強に励んでいた。
孤児なのに誰よりも優秀なトールキンに嫌がらせをする者がいた。ラグビーの授業中に喧嘩になった2人は校長室に呼び出される。校長に対して相手は「僕が悪かった。」と正直に話した。
がトールキンは「ラグビーの試合中の事です。少しやりすぎてしまいました。」と庇った。
校長は「学校は勉強だけ出来たらいい訳ではない。友達との関わりこそ大事なのだ。よって2人にずっと一緒に行動することを命ずる。」と罰を与えた。
教室に戻るがお互いに気まずくて離れていた。
相手の友達がトールキンの所にやって来た。
「今から僕たち食事に行こうと思うんだけど君も一緒にどうだい?」
「いや、僕は。」と断ろうとしたトールキン。「僕は本を読んでるから。」
「僕たちも本が好きだよ。」
少しトールキンの心が動いた。
更に友達は説明してくれた。意地悪した生徒が反省していること。彼が校長の息子であること。厳しい校長は息子に誰よりも賢くあることを求めている事。君が優秀なんで焦ってしまったんだ。彼の気持ちも分かってやってくれないか?校長の息子なんて嫌だと思うよ。
トールキンは彼らと食事に行くことにした。そして4人(トールキン、スミス、ギルソン、ワイズマン)は生涯の友達になった。彼らはT.C.B.Sという秘密結社を結成した。何の事はない。詩を研究する会だ。彼らはとても知的だったので気があった。彼らと過ごすうちトールキンは文学への興味が深まっていった。
トールキンとエディスは同じ家で過ごすうちに恋に落ちた。しかしエディスとの交際は勉学に悪影響を与え成績が落ちてきた。
神父は優秀なトールキンに奨学金を取らせて大学に進学させたいと考えていた。それでエディスとの交際を21才まで我慢するよう命じた。
トールキンは神父に勉強とエディスは関係ないと抗議するが神父に奨学金を取れなければ大学に進めず将来が閉ざされると説得され納得する。
トールキンはエディスに21才まで待ってくれるよう頼むが彼女に断られ振られてしまう。その後勉学に励みオックスフォード大学に無事入学。4人のうち2人がオックスフォード、2人がケンブリッジ大学に進学。
(この4人、優秀だわあ。)
大学では楽しく過ごしていて結構女性にももてたが彼の心にはエディスしかいなかった。21才になったら改めて結婚を申し込むつもりだった。
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【⚠️この後ラストまで完全にネタバレします。未見の方はご注意下さい。】
そんな彼にエディスから婚約を知らせる手紙が送られてきた。彼は絶望しぐでんぐでんに酔っ払って夜中に大学の中庭で自分の創作した言語で叫び、教授達を起こしてしまう。彼はこの騒ぎのせいで奨学金を打ち切られた。
奨学金を切られたので退学するしかないとトールキンがしょげていると一人の男性が話しかけてきた。トールキンが持っていた本を指差して「その本は面白いかい?」
「○○はいいけど△△がもひとつですね。」
「そうか。ところで君、昨日叫んでいたのはノルウェー語かい?」
「いえ。あれは僕が作った言語です。言語に興味がありまして。」
「そうかいノルウェー語に似ていたよ。僕の授業を受けてみるかい?僕はジョセフ・ライトだ。」と言うとスタスタと言ってしまった。
ジョセフ・ライトと聞いてトールキンは驚いた。彼が持っていた本の著者だったからだ。慌ててトールキンはライト教授を追いかけた。こうしてトールキンは言語学こそ自分の進む道と自覚し専攻を変えて言語学者のライトの元で言語学を学ぶことになった。
第一次世界大戦が始まり4人は戦争に行った。トールキンは戦地からエディスに手紙を送るがいつも返送されて戻ってきた。エディスの行方は分からなかった。
2人が再会出来た時エディスは自分がまだトールキンを愛していることに気付き婚約を破棄。2人は愛を誓った。
トールキンは戦地で友達とはぐれ探している時爆撃を受けて負傷した。気付くと内地に戻されていた。スミスとギルソンが戦死したことを知らされる。生き残ったワイズマンは精神を病んでいた。エディスはトールキンが生きて戻ったことをただただ喜んだ。
トールキンはスミスの母を呼び出す。スミスが書いた詩を出版したいことを話す。スミスの母は実業家の父の後を継ぐことをスミスに求めていてスミスが詩に興味を持つことに反対していた。それで出版の話に乗り気では無かったがトールキンはスミスには詩の才能がありこれは出版して後世に残すべきだと説得した。
実は詩が好きだったのは母親だった。スミスは母の影響を受けていたのだ。母はトールキンの説得を受けて出版に同意した。
数年後トールキンはオックスフォード大学の教授となりエディスと結婚した。2人の間には4人の子供が出来、『ホビット』の着想を得ることになる。End
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トールキンがオックスフォード大学だと言うのは知っていたのでてっきり裕福に育ったのだろうと思っていた。しかし早くに父を失くし、母も12才で失っていてびっくりした。まさか孤児で苦労しながら育ったとは。
映画には出てこなかったが後で調べたら父が亡くなってから母方の親戚の援助を受けながら生活していたそうだ。しかし母がカトリック教会に入信し違う宗教だった親戚が、援助してくれなくなり神父を頼ったらしい。
私が想像するに病気で余命幾ばくもない事を知り親戚には頼れないと思ったので入信して神父さんに子供を託したのではないかと思う。実際この神父さん子供達が住めるところを探してくれただけではなくトールキンが自立できるようになるまで影になり日向になり助言を与えて見守り続けていたことが映画からも分かる。
大学に入った後とか仕事しだしてからのトールキンは神父さんを訪ねたりしたのだろうか?映画に描かれてなかったから気になった。
またエディスにしてもトールキンにしても引き取って生活の面倒を見てくれた女性に対してももう少し感謝しても良くないかしらとも思った。エディスは女性に毎日自分の好みでない曲をピアノで弾かされることに文句を言っていたがあれはどうなんだろう?
あの当時養子にした子供を小間使い代わりにこき使うなんて事はよくあったがこの女性はこき使ったりしていない。家事を手伝わしている訳でもなく住むところを無償で提供し食事も与えて着る服だって買い与えている。何の見返りも求めずだ。
ピアノぐらい弾いてあげてもいいじゃない?おばさんの悪口言うエディスって性格悪いんじゃないかと思ったわ。トールキンにしても大人になってからおばさんを訪ねていって少しは面倒見たりしたのかしら?何だか恩知らずな2人のような気がしてならなかった。子供さん人も引き取って何の見返りもなく面倒見るなんて普通は出来ないよ。子供ってお金もかかるけど病気になったり色々大変なんだから。家事だって増えるし…。少しは感謝しなさい!
いい友達が出来て良かったね。あの3人と知り合わなかったらトールキンは誰とも関わらないような人になっていたかも知れないね。そしたらホビットもロード・オブ・ザ・リング(『指輪物語』)も生まれなかったかも知れないね。
お母さんが神父さんに頼んでおいてくれたのは正解だったね。あの神父は本当に良き人でしっかり導いてくれましたよね。神父さんがいなかったらトールキンはしがない職業の人にしかなれなかったと思う。
お母さん、想像力があって物語を考える能力をトールキンに与えてくれました。そして先の事まで考えていい人に子供達を託しました。お母さん凄く頭のいい人にだったんだろうと思う。
彼らが作った秘密結社の名前T.C.B.SはTea Club,Barrovian Societyの頭文字だ。Barrovianは多分彼らが行ったカフェの名前だったような気がするけどちょっと自信がない。思いつきでみんなで軽口叩いている内にふと出てきた名前で対した意味はない。
因みにvarrovianとはバロー語。イングランドのカンブリア州バロー・イン・ファーネスやその他の地域で話されている方言。歴史的にはランカシャー州で話されていた言語。