おれさま

PITY ある不幸な男のおれさまのレビュー・感想・評価

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)
3.5
"泣けたらいいのにと 心から思う"

温情、同情、慈悲、憐憫。
事故により、昏睡状態となった妻と、その弁護士である夫。誰一人として、笑顔のない映画であり、画面も平坦で定点的なカメラワーク。不気味で深く虚しい悲しみが映画を支配している。休日はラルフローレンのポロシャツを着て、友人とスポーツやテーブルゲーム。クリーニングの店主からはいつも割引を受け、近所の女性からは決まった時間にケーキを振る舞われる。
それら全て、周囲からの同情のもと、成り立つコミュニケーション。これが今作の肝。昏睡状態の妻を持つ、"可哀想な夫"。
誰が悪いのか、作り出したのか、本人?周囲?
記憶には残りづらい、むしろ自分自身も鑑賞後細かい描写は覚えていない。けれど、自分を肯定化するあの行動たち。気持ち悪い、忘れないでしょう。

自己憐憫、実は誰もが持ち合わせているものではないでしょうか。憐れみの目で見てほしい。慈愛の念で接してほしい。根幹はわからなくはない。同情を誘いたくなる心情は理解できる。周りにもいませんか。あなたもそうかも。

泣くことに執着…
なんて男なんだ、救いようがない。
本当に不幸な人だ。

そんな同情している自分も、自己愛の偽善なのかもしれません。エゴイズムの極。良作です。犬、最強映画でもあります。

あー、チョコ入りっぽいの…
犬さんにあげたらあかんです。
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