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浅田家!のmahoのネタバレレビュー・内容・結末

浅田家!(2020年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

笑いも涙も全部があったかくて、どうしようもなく愛おしい作品。
観終わった時には優しい気持ちになって、家族に会いたくなる!

私の人生の中で、ずっと大切にしたい作品の一つになりました。

まず役者さんが全員、本当に素晴らしくて、表情ひとつでぐっと心を掴まれます。
東日本大震災の発生を境に、前半と後半でがらりとタッチが変わりますが、全く違和感を与えずに観る人を引き込んでいく力が、すごい。

中野監督の「湯を沸かすほどの熱い愛」は、邦画では3本の指に入るくらい大好きだったので、期待値高めで鑑賞しましたが、想像を上回る素敵さでした。すでに焼き増し(リピート鑑賞)しました。

以下、ネタバレ注意です。
心に残ったシーンや言葉をここに記録させてください。
(私はもともと二宮くんのおたくなので、その視点込みですが…)

・面接すっぽかした政志の元に、父ちゃんが来るシーン。夕焼け空と、2人の逆光シルエットが本当に優しくて綺麗。父ちゃんの言葉に、うん、うんとうなずく政志の影が愛情深い。二宮くんと平田満さんの、言葉の置き方がどちらも絶妙。「なりたい自分に、なれとんの?」の柔らかな言い方がものすごく好き。

・消防服を着た父ちゃんからの「政志、ありがとな」。「ううん」って優しい顔をして首を振るだけなんだけど、誇らしげに、照れ臭そうに、交わす視線があったかい。

・リビングに飾った写真を眺めながら「(消防車に)乗りたかったなあ、しもたなあ」って言ってる父ちゃんと、「あら遠慮してたの?言ってくれたら代わったのに」って笑う母ちゃん。2人の関係性がものすごく伝わるシーンで、ああ、いい家族だなあって、自然とこっちまで頬が緩んじゃう。

・「この写真を持って東京に行こうと思う」と兄ちゃんに伝えるシーン、2人の全ての間合いと仕草が絶妙。本人たちも雑誌で言っていたけれど、二宮くんと妻夫木くんのタッグはもっとがっつり観たい。

・改札まで送りに来る母ちゃんの心配顔と、笑うだけの政志。あーこれぞ男の子だなあ!ってシーン。電車に揺られながら、兄ちゃんお手製のアルバムに「入れにくぅ…!」って笑う政志は、手触り感のある家族愛の表現で、ものすごく好き。

・出版社で、取れてしまったアルバムの「家」の文字を握りしめる政志の手。家族を「所詮は内輪」と否定された悔しさ。その後、酔っ払い政志に若菜ちゃんが喝を入れるシーンがものすごく良い。「僕にしか撮れやんから」と気づく政志に「知っとる」とばっさり。扉を手で支えて迎え入れるさりげない優しさは、すでに「家族」らしくて愛おしい。

・居間で1人で写真集をめくりながら、涙を拭って笑う若菜ちゃんを覗き見するシーン。政志のように、周りに自然と人が集まってくるタイプの人っているけれど、その愛情に気づけるのが、政志なんだろうなあってしみじみ。

・「絶対に消えない虹」をかける家族のシーンはぼろ泣きでした。真っ白なTシャツを手で広げて押さえながら「じゃあ、はい」って最初のクレヨンを手渡して、「うん」って、それでいいんだよ、上手だよって伝わるように見守る政志が、本当に心のこもった優しさで。背中に乗った息子の重さに、成長を感じて泣いてしまうお母さんと、部屋の隅っこに立って、泣きそうになる政志。「泣いてちゃ写真撮れないですよね」って笑顔。言葉が出ない政志、ファインダー越しに見つめた虹に、つうっと頬を伝う涙が、本当に本当に美しい。

・このシーンの直後、富山での作品展準備で、どこか上の空の政志。何か心に引っかかっているような表情が印象的。

・被災地の役場の喧騒、壁に張り出された悲しい伝言と、無力感。不意に目に入った写真の作業スペースは、その騒々しさとは違っていて、という対比が良い。「冷たくないですか」と声をかけたり、どこか心ここにあらずな小野くんの腕をぐっと掴む演技に引き込まれる。

・刺青にびっくりする小野くんに「前科はありませんから」、水の中で写真をさすりながら「大丈夫だね。落ちてない、落ちてない」って言い方が全部、優しくて優しくて。小野くんの表情に、安堵と信頼感がにじむのも印象的。

・北村有起哉さん演じるお父さんが、どうしようもなく泣ける。「まだの人間」「探そうにも顔がわからない」。気持ちのやり場がなくて、当時は人に八つ当たりするしかなかった、と話す被災者の方を私も知っていて。姿が重なった。

・友人の悲しい知らせを受けて、それでも戻ってきた小野くんに、写真を返す喜びを伝える政志のシーン。本当に本当に、温もりがある。「本当にありがとうって、みんな嬉しそうに帰っていきましたよ」。優しい声、あえて丁寧な語り口調、涙を溜めながらも優しく笑う表情、、

・若菜ちゃんの「200万払うか…」のシーン、もう最っっっ高!!!!!「ぜったい嫌や!」って言い方でしか答えを伝えられない不器用さが愛おしくて、何回でも見たい…ここだけで延々お酒飲める気がする…母ちゃんビンタの「手痛いわ」も以下同様…。。

・りこちゃんを演じた子役の子がものすごく、ものすごく素敵。強い意志を示すような視線と、言葉の発し方。土台しか残っていない「家」へと案内するときのやけに嬉しそうな笑顔と、すでに撮る自信を失くしている政志の浮かない表情の対比が、切ない。妹のまこちゃんの、幼さ故に状況が理解できていないあっけらかんとした明るさも、すごく心に残る。一番の思い出に、お父さんを奪った「海」をあげるところがまた、、

・小野くんたちが政志を送り出すシーン。「行っちゃったね」ってしみじみとする2人から、政志がいかに人の心に余韻を残す、あったかい人かを伝えていてすごく好き。

・桜ちゃん家族の無事を知らせる紙に、安堵の笑みを溢す二宮くんの横顔、どうしようもなく美しい。予告の時から一番心掴まれた表情、このシーンだったとは素敵すぎる。

・「人が失った物を補えるのは記憶だけ」「写真は過去の記録だけでなく、今を生きる力になる」(曖昧)という言葉が、心に染みる。二宮くんのナレーションの声が素敵。

※終盤、おたくが隠しきれずすみません…また焼き増ししたら追記します…
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