岩嵜修平

ラストナイト・イン・ソーホーの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

3.2
映画のクオリティは素晴らしく、メインキャストが魅力的なのは前提として、こんな「有害な男性性ゾンビ」映画を純粋に楽しめる男は、どうかしてるだろう。描くべき必要悪とも思わない。逃れ難い魅力がありつつも、エンタメとして消費して良い類の映画ではないと思う。

主人公の成長における社会の怖さを妄想や疾患を交えて描いた話だとしても、「彼女」の最後の展開が必要か疑問。ホラーとしても『マリグナント』に比べると、楽しむ余裕が無かったし、共通するテーマを描いた作品としても『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観た後だと、不要な描写が多すぎたと思う。

ケヴィン・スペイシーとアンセル・エルゴートの件があって、『ベイビー・ドライバー』の後に、こういうテーマを描く姿勢は素晴らしい(多くの監督は逃げると思う)けど、どういうきっかけで、この構成を選択したのかはエドガー・ライトに確認したいところ。パンフは売り切れていた。音楽も良かったが。

最近、観た映画では、芸能界を含め、今より狂っていた時代の"業界"における女性への加虐性においては『リスペクト』を、扱い方の程度は違えど日本においては『浅草キッド』を思い出した。予告編を観た感じでは、大前粟生「窓子」的な話を期待してしまった。これも映像化においては注意が必要だろうな。
岩嵜修平

岩嵜修平