くらげ

ラストナイト・イン・ソーホーのくらげのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

デザイナーとしての夢を追いかけて上京した少女エロイーズと、60年代にパフォーマーを夢見た少女サンディが、時空を越えてシンクロしていく物語。

現実と夢を行き来する映像の妙からは片時も目を離せない。視点の切り替えが多用され、視聴者もなんとなく長い夢を見ているかのような不思議な錯覚に陥る。
美術も素晴らしく、60年代ロンドンのナイトクラブのネオンの明かり、華やかなドレス、世界観に圧倒されていたら……まんまとストーリーのミスリードに引っかかって、最後のどんでん返しに全部持っていかれる。
霊の描写はそこそこ怖いが、この映画の巧みなところは、その霊でさえも最後のどんでん返しのための伏線であるところ。やはり、ただ怖がらせるだけではない、サスペンス要素がふんだんに埋め込まれた物語の面白さが、本作品の最大の魅力に感じた。

夢を追うサンディが女性として搾取・利用されて望まない結末を辿る様子は思い返すだけでも胸が苦しくなる。同じ夢を追う少女として、エロイーズがサンディの唯一の理解者となって物語が終わったことだけが救いだった。

ただ、公開当初も話題となっていたが、この映画はたびたび性暴力やフラッシュバックをにおわせる描写が登場する。しかし、公開の宣伝時にはそのようなことは一切触れられておらず、あたかも単なるタイムリープものとしての告知しかされていなかった。作品の根幹に関わる部分なのでネタバレの線引きしても難しいと思うが、もっと事前注意の告知として配慮されたらいいなと思わずにはいられない。
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