どらどら

ラストナイト・イン・ソーホーのどらどらのレビュー・感想・評価

5.0
Sandie) I didn’t want any of this.
Eloise) I know. I saw.
Sandie) They deserved it.
Eloise) I know.
(•••)
Eloise) You don’t have to do this, Sandie. You can live! Please! Live!
(•••)
Sandie) You can’t save me. Save yourself! Save the boy!

このシークエンスのための映画だと思った
光あるところには闇がある
あの時光り輝くショービジネスの陰で
言葉にされなかった痛みを
誰も耳を傾けなかった絶望を
見逃され続けてきた”殺人”を

今度こそ、語り直す
なぜなら私たちはそれを”見た”から
その痛みを”知った”から
そして今もまた、その痛みは地続きで存在するから

彼女たちを助けることはできない
それでも、だからこそ、私たちは自らを救い、ともに戦ってくれる彼を助けなければならない
生きねばならない
これこそフィクションの意味だと思う
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完璧な映画だ。
タランティーノがずっと挑戦してきたフィクションによる過去の負の歴史の書き換え/救済という挑戦は、マッチョ主義を相対化しながら”ホラー”のテイストを取ることで、エドガー•ライトが今作で完成させた。
シームレスにジャンルの壁を飛び越えるので、この映画がなぜ”ホラー”なのか、なにが”ホラー”なのか、改めて気づかされる。

トーマシン•マッケンジーの魅力的なアクト!
アニャ•テイラー=ジョイの見せる痛みと絶望。
僕がこの映画が大好きなのは、サンディの殺人に赦しを与えること。サンディの誤り自体は逃げずに書きながら、彼らが殺されるに値するという一点は決して譲らないこと。

音楽/ファッションがおしゃれとかそういう次元を飛び越えて、一瞬も無駄なシーンがないまま、過去を決して美化せず、かと言って現代を過剰に卑下せず、過去の光と絶望、そこから照射される現代の光と闇を一つの映画に共存させる神業。
どらどら

どらどら