このレビューはネタバレを含みます
なんで緑なんだろうと引っかかったけれど=赤い絵の具が盗まれた、とは推理出来ない自分が残念。だからこそ素直に騙されてミステリ楽しめるんだけど。奇妙な言い回しのルイーズの証言から旦那がジャクリーンを利用して妻を殺したんだろうとぼんやり予想したらそれだけ当たった。ただちゃんと彼にも愛があったのが想定外。サイモンが野望を持たなければ全員幸せになれたろうに…
ポアロの名推理ショーと言うよりは、続く犯行によって解いた後手感が強い。むしろ「恋人たち」がテーマと言っていいほど主人公を始めいろんな2人の結末が描かれていて、お互い多くを望まずただありのままの相手を受け入れ共に寄り添っているマリーとバワーズの2人だけは、これまでもきっとこれからも幸せな恋人たちなんだろうと救われる。
もうひとつの主役かと思うほど客船が印象的。船としての美しさじゃなく芸術品としての優美さがある。映像化されるクリスティ作品はいつも密室や重厚感ある建物の圧迫感が緊張を強いるイメージだったけれど、窓が多く手摺や窓枠が極端に細くてすべてが曝け出されるような開放感あるセットを殺人の舞台として作ったのは以外でおもしろかった。