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シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢のFHTのレビュー・感想・評価

3.7
人の一生を美しく描いた作品。

不器用すぎるシュヴァルは郵便配達員として黙々と仕事をする。自転車など使わず徒歩で手紙を届ける。
約30年間務めた彼のルートへの累積距離は約23万キロにも及ぶ距離だった。
そんなシュヴァルは手紙を運んでいる間何を考えているかというと、空想で建物を作っていたとか。
ある日郵便配達の道中、優しく接してくれる婦人に出会う。
その婦人と運命的に結婚をし、子供を授かる。
その子供の名前はアリス。女の子だった。

シュヴァルは自分の娘でさえどう接して良いかわからず、悪戦苦闘していた。そんなシュヴァルを見て呆れつつも優しく見守っていた婦人の優しさがこめかみを熱くする。

ある日、郵便配達の途中で何かに躓き、シュヴァルは山から転落する。幸い軽い怪我で済んだのだが、その躓いた石が彼の人生を大きく変える。

娘のアリスの為に宮殿を建てる。そう誓ったシュヴァルは明くる日から10時間の郵便配達の仕事をしてから10時間宮殿の建築に勤しんだ。

全ては娘の為に。
不器用なりの彼の愛の叫びに感動。

数々の悲しみを乗り越えシュヴァルは何を思って宮殿を作り終えたのか。
そしてラストシーンの笑みが人生を全うしたかのような表情で鳥肌が立ち涙してしまいました。

人とのコミュニケーションを取れない人も、決して心が無いわけではない。伝えるのが苦手なだけで人一倍敏感なのだ。

誰しもがたった1つの美しい人生を歩んでいる。
それは創造物でもなく事実なのだ。
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