Masato

ミッドサマーのMasatoのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.8

シンファンタにて

へレディタリーで鮮烈な登場を果たしたアリアスター監督の最新作。本作も、前作に引けをとらない問題作となっていて、むしろこちらのほうがより衝撃的で過激である。

まあ、監督らしく、なんとも形容し難い映画だが、良い意味でバッドトリップできて、もう最高。ここ最近傑作揃いのA24ありがとう。

端的に言えばウィッカーマンや最近だとApostleみたいな話なのだが、アリアスター監督の手にかかると訳が違う。次元が1つや2つも飛び越えたアートホラーへと変貌する。そもそも、エンタメ的な内容を文芸的に撮る映画が大好きなので、もう最高の一言だった。

まず、何より素晴らしいと言えるのが、徹底して作られた世界観。広がる草原、ポツポツと建つ小屋、晴天の青空、絵本から出てきたような美しい景観で、画面全体がきらびやか。そこにいる人々のエスニックな服装と振る舞い、言語。すべてが実在するかのようにリアルに作られていて、まったく虚構感がない。もはや一つのコミューンをアスター監督は作ったのだろうかと思えてしまう。

その中で、繰り広げられる想像を絶する儀式。この儀式に関しては、実際に見るしかその良さは伝わらないので、見るべし。言えることは、美しい映像とのコントラストで、より血や肉が色濃く映り、それでいて美しさを損なわない。レフンが撮るような上品かつ過激なエログロで最高。

また、映画の始まりから終わりまで、スローテンポではあるが、文芸映画のように、ひとつひとつのシーンをジックリと撮っていき、会話と会話、動作と動作の間をしっかりととっていき、すべてのシーンに深みが増している。計算された立ち位置やカメラワークのシーンも多く、そういうところでもアーティスティックさを感じられる。

監督が前作でもやっていた、人物の顔をとにかくクロースアップする手法も多く、主人公の綺麗な肌が美しく映っているのも印象的。狂気よりも、美しさが先行して浮かんでくるホラーなのが良い。

でも、所々笑えるシーンがあり、劇場内も笑いで溢れるシーンもあった。もはや、笑わせに来ているとしかいいようがないシーンもある。特に、2つの合唱が共鳴するシーン。

ストーリーもやはり良い。表面的な物語というか、プロットはものすごく分かりやすく、誰でもわかるような伏線を張っている。でも、細かな部分での小さな変化なども多数あり、その理由がわからないということもある。トラウマを抱えた主人公が、苦しみの捌け口が見当たらない中、狂気の楽園で見出した救いも、なかなか感慨深く、それと並行して、文化間の齟齬などを描いており、深い。ラストは不思議な感覚になる。

へレディタリーよりも面白く見れた。今回は映画祭での鑑賞なので、映倫ガン無視の無修正だったが、公開時には規制は確実だろうし、それでもR-18の可能性は強い。170分あるディレクターズカットも見てみたい。とにかく、もう一回みたい。

フローレンスピューがめちゃくちゃずんぐりしててカワイイし、前述したとおり、肌がものすごく綺麗。トランスフォーマーの準主役だったジャックレイナー。一皮どころじゃないほど役者魂を見せていて素晴しい。外見に頼らないイケメン俳優。


追記 2020.02.13
ディレクターズカット版を見てみました。R指定ではなく、NC-17というアメリカでも最高のレーティング指定。171分。実に24分の追加カットのあるものだったが、正直ワンシーンだけ明らかに追加されたものだと気づいたくらいで、他はあまり変わらなかった。主にドラマの厚みを細かく追加したものだと思われる。旅行前のクリスチャンやダニーやペレの。

ちなみに、中盤から終盤にかけてのあたりで、とある顔が森の中に薄っすらと浮かび上がっている。見つけてみよう。気づいたときは怖すぎて鳥肌と涙が出た。

自身の恋愛経験をこういう形でBreakupムービーとして作ったというのがおかしい。なんで失恋がウィッカーマンになるんや!?文化間の齟齬と彼氏と彼女の齟齬は一緒だという壮大なメタファーだというのか?凄いよアリアスター。
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