この話を考えたアリ・アスター監督は人間の風上にも置けないと思ったけど、これはある種のサイコセラピーと言っていいのかもしれない。ホラー映画を観終わったというよりも、バラードを聴き終わったというような感覚になった。監督は「ラブストーリー」だと言っているインタビューの記事を見たけど、愛の形は様々だと妙に納得。
家族を事故で失ったばかりのダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を専攻する友人たちとスウェーデンの奥地で開かれる90年に一度の「祝祭」を訪れる。
物語はいたってシンプルで家族を失い恋人ともすれ違いを感じる女性が、白夜の村での休息を経て、ありのままに心のままに自分を解放し笑顔を取り戻すというもの。
この映画に悪い人なんて一人も出てこない、村人たちはみんな親切で食事や寝床を提供してくれるだけでなく催し物にまで参加させてもらえ、声をあげて泣きたいときには一緒に泣いてくれたりもする。
村には独特の死生観が根付いているが決して排他的などではなく、部外者である我々はただそれを尊重するだけでいい。
これから観に行くという人は、あまりあらすじ等調べずにこの「祝祭」を訪れることをお勧めするけど、ナマモノが苦手な人は注意したほうがいい。
ラストのカットで自分からも自然と笑顔がこぼれてきたが、観終わって振り返るとこの映画をカップルで観に来た猛者が結構いることに気づいた。恋人の情事を覗き見してしまったからと言って、家ごと燃やすことがありませんように…