DJあおやま

ミッドサマーのDJあおやまのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.9
ホラー映画はまったく観ないジャンルの1つなのだけど、さすがにこの盛り上がりには乗らざるを得ないと思い鑑賞を決めた。平日午前の回ながら、コロナウィルスの影響からか、はたまた映画の特性からか、客入りも少なくお年寄りもいない。まばらな客入りのなか、自分の前の座席におそらく女子高生だと思われる女の子2人組が座った。『IT』ぐらいから、日本のティーンの間で海外ホラーが流行っていると聞くが本当だったのか。しばらくすると、2人の会話が聞こえ、どうやらホラー映画を映画館で観るのは初めてだという。おいおい、君たち大丈夫かと勝手に心配になってしまった。かく言う自分も、前評判から少しびびっていて、嫌な胸騒ぎを感じながら上映を待っていた。

いざ蓋を開けてみると、思いの外、ショッキングな映像は少なく、目を背けたくなるようなシーンもなかった。グロテスクな表現は多いものの、不思議と不快感はない。そもそもこれはホラーではないのではないだろうか。まったく価値観や倫理観の異なる小さなコミュニティの猟奇的な風習に、薄気味悪さは感じたものの、死生観についての説明も多いため、儀式の意図が理解でき、秩序のなさに恐怖を覚えることはなかった。これがもし説明はそこそこにただただ風習を見せつけられていたら、それはぐったりしたかも。
単に古くから伝わる風習を解説付きで見せられてもそれはただのドキュメンタリー。本作は、とどのつまりメロドラマで、その要素が強く存在しているのが特徴だろう。祝祭に向かうまで、それぞれの人物のキャラクターやバックボーンを描くのにわりかし時間を割いているところからもわかる。ラストシーンまでメロドラマで、ついぐっときてしまった。明るすぎる空と青々とした草木に映える白衣が鮮烈で、どこか清々しさすら覚える作品だった。
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