凛太郎は元柚彦

ベスト・オブ・エネミーズ ~価値ある闘い~の凛太郎は元柚彦のレビュー・感想・評価

4.2
──肌の色は違うが、血の色は同じだ。
人種差別をテーマにした社会派ドラマかと思って見たら、究極のディベート映画だった。
KKK(過激派白人至上主義)の代表おじさんVS頑固な下町代表の黒人おばちゃん。
外面はいけ好かないアメリカ人だが実は情深いKKK代表をサムロックウェルが演じ、下町の住民から信頼され行動力のある早口関西弁を喋りそうな最強黒人おばはんをタラジ・P・ヘンソンが演じている。〝混ぜるな危険〟の真逆の二人。さあ、どっちが勝つか?!…と思いきや…。ん?なるほど、そうなって、こういう結末に収まるか。
ディベートにおいて大事なのは正論や勝敗ではなく、異なる価値観を持つ人間同士が同じ卓につき話し込むことだ。結局〝対立〟の最たる原因は相手を正確に理解していないことなのだ。
これは人種に限らずとも、嫌いな人がいたらとにかく話しかけに行け!というメッセージにも通ずる。特に投票のシーンは目が離せないし、ラストシーンのカタルシスは素晴らしい。
タラジの演技も良かったが、サム・ロックウェルのクセのある男臭さは文章じゃ絶対に描き出せない魅力がある。
心が震える傑作だ。