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君の誕生日のしおりのレビュー・感想・評価

君の誕生日(2018年製作の映画)
5.0
今日で事故から10年というニュースを目にして、配信開始直後にウォッチリストに入れておきながら
作品テーマの重厚さゆえずっと再生出来なかったことを思い出し…。
子どもが亡くなる作品はバウンダリーがあやふやになるくらいくらってしまうので極力観ないのですが
ちょうど10年の節目の日ということで
覚悟を決めて視聴しました。

泣いて泣いて、会いたいのに会えない悲しみで今も胸がいっぱいです。

この作品で描かれる、亡くなった方の誕生日会があまりぴんとこなくて
でもピアの繋がりの力をとても感じたので、調べてみました。
韓国でも一般的に行われていることではなく、この作品の監督がボランティアとして訪れていた、精神科医が設立した団体の活動の1つだそうです。
その団体に集まる遺族の中には、亡くなったお子様の誕生日が来るたびにつらい気持ちになる人がたくさんいて
誕生日が近づくと、一カ月前ぐらいから外出できなくなり、ごはんをあまり食べられなくなる人も…。
「だったら誕生日を一緒に過ごそう」と、誕生会を開くようになったのが活動の始まりだそうです。

職業柄、グリーフケアに関わることがありますが
悼み方や弔い方、死との向き合い方は本当に人それぞれです。
正解はないし、亡くなった方の時間は止まるのに自分には容赦なく日々の暮らしが続いていくことでメンタルに不調をきたす方はたくさんいらっしゃいます。
関係性によってはサバイバーズギルドやヴィクティムブレーミングに悩み、苦しめられることも。

この作品の「誕生日会」で繋がるピアの力に、グリーフケアの1つのヒントをもらえた気がします。
心に傷を負った人たちが集まって語り合い、思い切り泣くこと。
故人との思い出をシェアすること。
どんな時に故人を思い出すか、胸の内を声に出して語ること。
あの場、あの空間そのものが、少しずつ癒しになるんだ、と。
この作品を観ることで、私も「誕生会」をともに経験できた気がしています。

最後に。
セウォル号で犠牲になった方々のご冥福をお祈りいたします。
犠牲者の多くは修学旅行中の高校生。
事故に遭わなければ今ごろ27歳の素敵な大人になっていたはず。
異国の他人である私でさえ想いを馳せてしまうのだから、ご遺族の気持ちはいかほどでしょうか。
慮ることすら憚られます。
どうかどうか、天国で安らかに。
そしてたまには、ご実家のセンサーライトでそばにいるよと教えてください。
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