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カメラを止めるな!スピンオフ「ハリウッド大作戦!」の消費者のレビュー・感想・評価

4.3
・あらすじ
ゾンビパニックの悲劇が起きた半年後…
千夏はショックで声を失い、ハリウッドに移住しホリーと名乗ってウェイトレスをしていた
未だトラウマが残る彼女だったがウェイターの彼氏、ジョンと店主のトミーの助けもあって懸命に過ごしていた
そんな最中、ハリウッドでもゾンビパニックが発生してしまい千夏は再び戦う事を余儀なくされてしまう…
というあらすじの一部でヒットしたゾンビ専門チャンネル開局を記念したスペシャルドラマ、「ONE CUT OF THE DEAD」のハリウッドを舞台とした続編の撮影を行う一同
しかしスポンサー企業の社長が薬物で逮捕され、ハリウッドに行く予算が下りなくなってしまったのを皮切りに今回の撮影もトラブル続きとなっていき…!?
というコメディ作品

・鑑賞理由
普段はホラー/スラッシャーやサスペンス、ミステリー、バイオレンス、クライム、ノワール、ドキュメンタリー等の暗さや激しさのある要素が含まれている作品を観る事がほとんどだけど低予算ながら予想を裏切るどんでん返しの衝撃で社会現象となった「カメラを止めるな!」のスピンオフ作品という事で本編を鑑賞したのでこちらも一応と思い鑑賞

・感想
前作の「カメラを止めるな!」は大ヒットしたのも頷けるどんでん返しで凄く楽しかったけど、その構造が既に分かっている状態で観る今作は面白く出来ているんだろうか…?という一抹の不安を抱えながら観たもののそれは杞憂に終わってちゃんと前作と同様に笑えるコメディとして機能していて一安心!

例のどんでん返しが分かった状態で観ている事で逆に映画パートがフリになっている前提が頭にあるからこそ「これはどんな裏側があってこうなったんだろう?」と逆に楽しみに思いながら観られた

更に映画パートもトラブルやグダグダはフリとしてありながらも、ゴア描写が以前よりはグレードアップしていたのも良かった
現実世界では前作が大ヒットした一方で劇中でそれを反映してしまうとチープさやトラブルの連続という一番の売りが出しづらくなるという中でちょうど良い落とし所がゴアの強化だったのかな?と
千夏の彼氏、ジョンを演じる真央の彼氏のジョーがマシンガン乱射の場面で「Say hello to my little friend」と名作マフィア映画「スカーフェイス」へのオマージュを地味にしていたのもクスッと来た

そして今作では撮影現場でスタッフ一同が眠っていた際にイビキのうるささに耐えかねた日暮監督が撮影に使わない事になった棺の中で眠っていたせいで事情を知らないスタッフ達にトラックで遠くへ運ばれてしまい不参加となっている
これが良い方向に働いていて前作でも映画への熱意から暴走して撮影を仕切っていた真央がより活躍する流れに自然に話を運んでいて良い
何なら撮影を仕切るどころかスタッフが千夏の飲む薬と睡眠薬を取り違えた事で千夏を演じる松本逢花が睡魔に襲われふらついた末に眠ってしまった事から衣装とウィッグで真央が急遽代役まで勤めていて笑ったし驚いた
顔が映ってなければ映画パートで気付かないもんなんだなぁ、と
声を失った、という千夏の設定があったからこそ声の比較が出来ず成立した展開でもあるのでそういう点でも見事

あとは何と言ってもしゅはまはるみ演じる晴美の「ポン!」が今回も出て来たのが嬉しい
あのちょうど良いシュールさと安さでどうしても反射的に笑っちゃうんだよなぁ…w

また前作では離れてしまっていた真央と日暮の心の距離がドタバタな撮影を共にした事で取り戻される、というハートウォーミングな終わり方をしていたのに対して今作では千夏の代役をしていた真央がジョンを演じるジョーと演技上でやり取りをする中で「ここに残る」と言っていたのがジョンのアメリカへの帰国には付いていけない、という事を表す物だった、という展開が撮影終了直前にあって「巧いなぁ…」と
ガチのホラー/スラッシャー作品ではロマンスや感動は余計に感じる事も多いけどこの作品はコメディだから違和感なく受け入れられるし

どんでん返しの構造が全てバレた状態で期待値が下がっているのを逆手に取ってちゃんと笑わせてくれる良作だったと思う

・総括
構造が既にバレている中でちゃんと作品を成立させたのも凄かったしスピンオフだからこその60分弱という尺も短過ぎず長過ぎずでちょうど良く気楽に楽しめる作品だと思う
「カメラを止めるな!」を観た人はそれだけで満足している人も多いだろうけど今作もちゃんと面白いので是非観てみて欲しいな、と
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