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ペイン・アンド・グローリーのざべすのレビュー・感想・評価

4.0
大好きなペドロ・アルモドバル監督作品。2019年公開。

正直アルモドバル映画は、中期(2000年〜2010年くらい)の方がノリにノッていて最高だ。
それ以降は良くも悪くも落ち着いてしまっている。
妄想劇場を出し切ってしまって、人生のまとめのエンディングを感じる。
楽しかった映画のパンフレットの制作秘話や対談を読むような味わいも全く悪くはないんだけど、「ああ、終わりなんだな」という侘しく寂しい気持ちになる。
これが熟成……。

ちなみにこの映画の構成・構造は素晴らしい。
映画監督という虚構の創造者を主人公に据えることにより、この映画はどこまでが本当なのか見栄えを良くしているのか分からなくする。
そして主人公はそのままアルモドバル監督へと置き換えられ、半自叙伝映画にもなる。(しかもどこが“彼”なのかは上手くすっとぼけられる寸法だ)

著名な映画監督が悩んでいる映画といえばフェデリコ ・フェリーニの『8 1/2』が思い浮かぶが、本作では『8 1/2』のオマージュもちらほら出てくる!楽しい!
そして、人生とはお祭りだと言った『8 1/2』とは全く被らない。
『ペインアンドグローリー』は「人生とは」の問いに言葉で捉えようとしている。
ペインの痛みにグローリーの栄光が、監督生に対するアンサー(そしてそうありたいという希望)なんですねアルモドバル。
アーティストとしては「まとまってしまったな…」と悲しいんですが、痛みを受け入れ光を目指すその明るい思考はこれからの人生でとても生きやすく健全だと思います!
毎日の生活を謳歌してくださいアルモドバル!
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