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ポール・サンチェスが戻ってきた!のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

2.5
【もう一つの『ブラック・クランズマン』】
アンスティチュフランセの特集上映で観てきた。カイエ・デュ・シネマベストテン2018で5位に輝いた作品。監督のパトリシア・マズィは日本では知られていないのですが、フランスの名門映画学校《ラ・フェミス》の入試問題で彼女の過去作『トラヴォルタと私』が出題されたり、巨匠ジャック・リヴェットが言及していたりするフランス映画の重要監督だ。

そんな彼女の描くサスペンスはユニークなことに『ツイン・ピークス The Return』と『ブラック・クランズマン』を足して2で割ったようなビザール映画でした。

消息不明の殺人者ポール・サンチェスが地元に現れたと話題になる。抑圧された女性憲兵は、ポール・サンチェスを捕まえ名声を得ようとする内容。

ポール・サンチェスの逃亡と憲兵側の捜索シーンが交差する。くっつきそうでくっつかないじれったさ、明らかな伏線をなかなか回収しようとせず先延ばしにする。何かが起きると見せかけて何も起こさないテイストが『ツイン・ピークス The Return』における二人のクーパーとFBIのぎこちない挿話のクロスと重なる。

そして、抑圧された女性憲兵が名声を得ようとするうちに未知なる存在であるポール・サンチェスの悪が肉付けされていく様は意外なことに『ブラック・クランズマン』の黒人捜査官の熱意に通じるものがある。

しかしながら、この観客を弄ぶスタイルが受け入れ難く、ポール・サンチェスも魅力的ではなかった為、『天国と地獄』のように犯人を魅せないスタイルの方が良かったのではと思ってしまった。
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