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ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのsomaddesignのレビュー・感想・評価

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たぶん傑作なんだろうけど、自分にはよく分からず

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IT関連企業とベンチャー企業の発展により、多くの富裕層が暮らす街となったサンフランシスコ。この街で生まれ育ったジミーは、祖父が建てた家族との思い出が詰まったヴィクトリア朝様式の美しい家を愛していた。しかし、地区の景観とともに観光名所にもなっていたその家を現在の家主が手放すことになり、家は売りに出されてしまう。ジミーは再びこの家を手に入れるために奔走し、そんなジミーの切実な思いを友人であるモントは静かに支えていた。
サンフランシスコを舞台に、都市開発により取り残されてしまった人たちのリアルな姿を描いたドラマ。

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快進撃続くA24とブラッド・ピットのPLAN B。アカデミー賞作品賞「ムーンライト」以来の再タッグ。
なんとなく覚悟はしてたけど、思った以上に超薄味。
病気の小鳥に飲ませる薬くらい薄味。

味わいが繊細すぎて、自分にはイマイチ理解できず。
詩か純文学を映像に翻訳してるみたい。

前提として近年のサンフランシスコの変容を知らないと辛い。
GoogleやApple、Facebook、Intel etc…巨大企業を中心にIT産業が多く集まるシリコンバレー(サンフランシスコ・ベイエリア周辺)。
住宅不足に加えて都市開発の波により地価が高騰してしまい、年収数千万円の人でも家賃の支払いに苦労している現状なんだとか。そのためIT企業に勤めるエンジニアの中にはハウスボートや車上生活、路上生活する人もいるとか。
BUSINESS INSIDERの記事によれば、一般的な賃料は月4000ドル以上、売買物件は130万ドル以上、一番安いエリアでも平均89万ドルもする。一人暮らしの人が最低限の生活を送るために必要な金額は、年6万9072ドル。サンフランシスコで家を借りて快適に暮らすには年収16万4214ドル必要という調査もあり、ベイエリアでのIT企業で働く人の平均年収14万2000ドルでも全然足りてない。IT企業で働く人の60%近くがベイエリアに住む経済的な余裕がないという。

ことほど左様に、過剰な地価の高騰によってマイノリティや貧民層が住んでいた地区も富裕層に乗っ取られてしまい、追い出されてしまう状況が続いているのだそう。

急速に変化していく街の中で、取り残されて追いやられていく人々の、行き場のない気持ちの映画だったのかなあ?
思い出詰まった家は、理不尽なまでに履いて捨てられるように追いやられていく中で、自分の価値の象徴でもあったのかも。
変わっていく町並みと失われる思い出。急速な変化に自分だけおいてけぼり感。寂寥感と焦燥感ないまぜに、時代に流されない自分の特別感/承認欲求みたいなモノの象徴があの『家』。だからこそ変わらないものの貴重さと、変わっていく必然性に気づくラストなのかも。


62本目
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