サラリーマン岡崎

いなくなれ、群青のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

いなくなれ、群青(2019年製作の映画)
4.8
物語はファンタジーであるが、
意外にも現実の僕たちを見せられているようだった。

捨てられた人が集まる階段島。
人々は自分の失ったものを見つければ、
元いたところに戻れる。
階段島には日々暮らす寮もあり、
何不自由なことはない。
何もバイアスがないその島での生活は楽で、
捨てられた人たちも受け入れて過ごしている。
そこに現れる真辺由宇。
理想主義者の彼女だけが島から脱出しようと試みる。
現実世界もバイアスがなく、
何も考えずに生きるのはとても楽だ。
しかし、それでいいのか、それが究極の幸せなのかを真辺を通して私たちに問いかけられる。

そして、明かされるそれぞれが失ったものも、
僕たちが日々自分自身と葛藤しているものそのものである。
そして、各登場人物の失ったものを考えると、
僕らの社会の複雑な仕組みがあらわになり、
どういう生き方が良いのか考えることを僕たちに強いている。
若手俳優たちが自分たちの意見を言い合っている姿が、
その要素がかなり強まる。
青年時期は自己が形成される時期だ。

ロケ地の島は僕も行ってみたいほど美しい。
でも、その楽園でぬるま湯に浸かりながら生きるのか、
傷ついても、究極の幸せを追い求め生きるのか、
なかなか難しいけれども、
結局は真辺と七草のように違いが影響しあって生きていければ、
幸せになれるんだと思う。