物語はファンタジーであるが、
意外にも現実の僕たちを見せられているようだった。
捨てられた人が集まる階段島。
人々は自分の失ったものを見つければ、
元いたところに戻れる。
階段島には日々暮らす寮もあり、
何不自由なことはない。
何もバイアスがないその島での生活は楽で、
捨てられた人たちも受け入れて過ごしている。
そこに現れる真辺由宇。
理想主義者の彼女だけが島から脱出しようと試みる。
現実世界もバイアスがなく、
何も考えずに生きるのはとても楽だ。
しかし、それでいいのか、それが究極の幸せなのかを真辺を通して私たちに問いかけられる。
そして、明かされるそれぞれが失ったものも、
僕たちが日々自分自身と葛藤しているものそのものである。
そして、各登場人物の失ったものを考えると、
僕らの社会の複雑な仕組みがあらわになり、
どういう生き方が良いのか考えることを僕たちに強いている。
若手俳優たちが自分たちの意見を言い合っている姿が、
その要素がかなり強まる。
青年時期は自己が形成される時期だ。
ロケ地の島は僕も行ってみたいほど美しい。
でも、その楽園でぬるま湯に浸かりながら生きるのか、
傷ついても、究極の幸せを追い求め生きるのか、
なかなか難しいけれども、
結局は真辺と七草のように違いが影響しあって生きていければ、
幸せになれるんだと思う。