いち麦

TENET テネットのいち麦のレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
5.0
タイム・スリップではなく時間軸逆行の意味を噛みしめ、ある人物の生き様に痺れ泣く。物語の大筋は掴めるが、山場の細部は瞬時には理解がおぼつかない難解映像の連続。だが、ともすれば間抜けな画になりかねない逆回し映像をクールに見せるアイデアが素晴らしい。重低音と反復を活かした緊張感ただならぬルートヴィッヒ・ヨーランソンの劇伴・音楽も見事。紛れもなく大画面・大音量が似合う娯楽大作…それでいて直ぐにでも映像の端々をソフトで何度も再生・逆再生してじっくり堪能したくなる様な超マニアックSF映像力作。

2回目鑑賞済。分かる…分かる…非常によく分かるワ。映像の細部まで意味がくっきりと見通せるっていうのは気持ちがイイもんだ。ノーランが実物撮影に拘っているからこそ、要所要所をどうやって撮影していたか想像するのもまた楽しい。

3回目鑑賞済。前回の鑑賞時に気づけなかったことも発見でき理解が深まった。映像の細部の意味付けから頭が解放されると、人物たちの心情への没入感は一層強く。終盤山場には、ここまでの道程も重なり、またもや涙してしまう。

IMAXレーザーGTで4回目鑑賞済。上下の視野が通常版に比べどれくらい広がっているか確認。カーチェイス場面で流れていく車道の映像面積が広いのはスピード感と吸引力が増す。確かに、より一層美しく映えるカットも、映像情報量的に、より分かりやすいカットも。IMAXスクリーンをフルに使ったアスペクト比1.43:1の映像は本編中どれくらいの割合なんだろう…結構多かった気がする。正方形か下手すると縦長にすら感じさせる場面も。多分、もうディスクでは見ることが出来ないだろうから貴重ではあるね。

人物の動きは順行だが、背景逆回しにしたくてキャストを逆行演技させて撮っている場面…皆がノーランにシバカレながら演ってる撮影現場を想像してやっぱり一寸笑ってしまう。
いち麦

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