イマジンカイザー

TENET テネットのイマジンカイザーのネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ダークナイトを彷彿とさせるカネに糸目をつけないトンデモアクションに、キップ・ソーンを招き考証にスジの通った異様なセカイ。インセプションやメメントの如き多重構造の謎に、極めつけはダンケルクで観られた大勢対大勢の戦闘シーン。
007を撮らせてくれないから自分で撮った、くらいの規模だと思っていたら、『時間』をテーマにこれまでの経験値すべてを投入してきたクリストファー・ノーランよくばりセット。ド派手で目を剥く描写の釣瓶打ちで、映画慣れしてないと脳が理解を拒んでしまいそう。

時間を逆行させるとどうなるか? を物理学の視点から考え抜くとこんな画がお出しされるのか、と戦慄するばかり。インセプションの『夢』の描写でも唸ったものですが、ノーラン監督はこういう画を何処で思い付くんだと思わざるを得ないというか。
とにかく目の前で起きているありのままを受け容れることから始めましょう。あれこれ考えても流れる情報が多すぎて処理できませんから。

無論その他の要素もキレッキレ。ダークナイト・トリロジーで見られたバットマンのアクションあれそれの発展系がこれでもかと打ち出され、また『実機』を壊したなあと最早笑って観られる破壊シーン。スパイとして世界を駆け回るのもありロケーションもこれまでの作品より更にゴージャス。ヒロインの最後の『格好』含め、このあたりは007へのオマージュなのかなと思ったり。

画がド派手で首を傾げるながら、敵味方の思惑がそれぞれシンプルなものにシフトしてゆくのは、ノーラン監督の造り方故かしら。ここはインセプションやインターステラーに近くてわかりやすい。

時間逆行モノとしてそこまで新鮮か? って言われるとそこまでじゃないけれど、そうした読者がアタマの中で思い描いていた絵面をそのまま映画にした、となれば本作がどれだけやばいか解ってもらえるでしょうか。
最大公約数で本作をまとめるとノーラン監督の007ってことになりそうなのですが、スパイが奪い合うモノやギミックをここまで複雑にされちゃうともうぐうの音も出ません。
ノーラン監督、恐るべし。